将棋ソフト不正問題
将棋ソフト不正問題は、疑われた三浦9段が不正をしていなかったと、第3者委員会が結論を出した。将棋竜王戦を前にして、竜王戦トーナメントを勝ち抜いて挑戦者に決まった三浦9段が、将棋ソフトを対局中に見ているのではないかという、指摘が渡辺竜王から上がった。今になってみると、渡辺竜王の指摘があったということであろう。疑いが出て竜王戦挑戦者が一年かけて戦った予選の決定戦で敗れた、丸山9段が代わって竜王戦7番勝負を戦った。渡辺竜王が4勝3敗で勝利し防衛した。何とも後味の悪い結果である。また将棋連盟が嫌いになった。将棋に組織の運営ができる人がいない。将棋に強いからといって、組織の運営能力が高いというはずもない。どちらかといえば、お山の大将で全体を見渡す能力に欠けるのは当たり前のことだろう。そんな人間でなければ、将棋のようなゲームに人生をかけられるわけもない。子供のころから将棋ばかりやっていた人間が、組織運営をしているということが、無理なことなのだ。
竜王戦が終わり、第3者委員会から、三浦9段が濡れ衣であったことが発表された。それなら竜王戦をやり直さなければならない。第3者委員会の不正がなかったが、出場停止処分は妥当という結論は、あまりの幼稚さに開いた口がふさがらない。臭いものに蓋をして終わりでいいとお墨付きをつけた話。程度が低すぎる。この話の気持ちの悪いところは、渡辺竜王から挑戦者を変えてほしい、という指摘がなされた点だ。三浦9段と戦えば負けると感じたから、こういう不正問題を主張したといわれても仕方がないことにならないか。丸山9段のほうが戦いやすいと感じての主張だったとしたら、最悪の展開である。この事件に際し、三浦氏に対して、間違いなくソフトを見ていると指摘した他の棋士もいた。その棋士が証拠を提出しないのであれば、この結果を持って、その棋士は1年間の出場停止とすべきであろう。同時に渡辺竜王は竜王剥奪である。改めて、丸山9段と三浦9段で竜王戦を行うべきである。そのようにしなければ、三浦9段の冤罪は晴れない。証拠もなく人を疑うということがどれほど罪が重いことかを、明確にするべきだ。
20代の2,3年の間将棋中毒になったことがある。将棋を指さずにいられないのだ。小学生のころから将棋好きではあったが、中毒ではなかった。フランスから戻り、絵だけを描いていたころのことだ。絵を描く時間より、将棋を指していた時間のほうが多かった。毎日渋谷にあった竜王将棋センターというところに通った。まだ竜王戦がなかったころのことだ。センターの席主は元奨励会員の人だった。自分は奨励会員のころ中原名人より強かったと、ある時口にした。その時その人の悔しさを垣間見た。そこでは3段まで行った。千駄ヶ谷にある将棋連盟会館の道場にも通った。そして5段にまでなった。尋常じゃなかったと思う。頭の中にこびりついて将棋盤が離れなかった。それくらい中毒になったのだが、米原という人が連盟の会長になって腹が立ち、将棋をやめることができた。今思えば幸運だった。あれ以来人間と将棋を指すことはない。
第3者委員会の調査で不正がなかったという結論が出た理由は、三浦9段のスマートフォンを調べて分かったことだそうだ。その程度のことなら、渡辺竜王の抗議があった際に調べればよかっただけのことだ。この問題が出た時に私が書いた通りのことに終わった。そもそもコンピューターが人間より強くなって、職業としての将棋指しの立場が変わる。消滅してゆく不安なのだろう。遠くないうちにコンピューターゲームにとってかわられるはずだ。その焦りから今回のような見苦しいことになった。そもそも、スマホ不正が疑われた一年前に持ち込み禁止にすればよかっただけのことだ。そういう取り仕切りをするのが組織だ。その落ち度がありながら、怪しいぐらいで出場停止処分にした、連盟の幹部の責任の取り方である。会長辞任が当然である。これで終わりということであれば、世間を甘さの読みきりか。第三者委員会はどうも言い訳手段のようだ。情けない世間になったものだ。