舟原の秋

   


舟原の秋、である。右手が鎮守の森である。奥に見える山が箱根明星岳だ。こうして広がる耕作地が何より美しい。農作業が風景を作る仕事だということが良く分かる。見えるのはお隣の畑だ。大地に絵を描いている。80歳を超えたおじいさんとおばあさんで、一町歩の畑を作っている。朝六時三〇分には作業を始める。今の時期は、早生ミカンの収穫である。その前が、里いも掘り、サツマイモ、栗と何でも沢山作っている。農作業は一年中、途切れることはない。と言って、農業で生計を立てて利用でもないし、もちろん市場に出荷する様子もない。多分『ふれあい市場』という地域にある、直売場に出しているのかとも思うのだが、はっきりはしない。いずれこうして素晴らしい景観を作り出している、大事業なのだがもちろんそういう意識はないだろう。

この場所を毎日犬を連れて散歩させてもらえるのだから、恵まれていると思う。里地里山が美しかった時代は、この山のすべてが薪炭材の林や、カヤ刈り場になっていたのだろう。この地域の場合、杉檜を植えるより薪や炭を生産することが、大きな産業であったはずだ。尊徳の話を読むと、そうした山を入札して受けて、薪炭を生産する。こういう事業を試みたようだ。いわば江戸に対するドバイである。エネルギー資源の方が、杉檜による建築材の生産より、経済性が高かったのである。木曽や秋田では建築材が生産される方が、経済性がある。江戸期の都市近郊の経済の循環である。またそういう時代が来るのかもしれない。もしそういう時代が来たとしたら、江戸時代の知恵に加えて、様々な技術革新がある。日本は随分豊かな社会が形成されるはずである。


「ホロホロ朝市の様子」


「まるしぇきんじろうの様子」
最近こうした物産市に出ることが多い。実は今日も箱根地産カフェとまちなか市場朝市が2つ開催されている。
午後にはフラワーガーデンでいきごみフェスティバルである。先週は、農業まつりも盛大に開かれた。沢山の市が開催されることは、素晴らしいことなのだが、それに出店すること自体が、負担になってきていることも事実だ。開催者側は地元の生産者の為に考えて、市を開催する。確かに有難いことだが、市に出てその労賃まで稼げるということはない。農産物も通常ルート以外に確保しなければならないのだから、それなりの工夫が必要となる。このあたりを今後どう調整することが出来るか。常設の市場を作るということが、一つの方向なのだろうが、今度はその施設の維持費ということも出てくる。いずれにしても、小田原の無尽蔵プロジェクトは始まったところである。

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