深せんで日本人学校の生徒が殺傷される

   

 

 中国南部・広東省深$5733市の深$5733日本人学校に通う10歳の男児が襲われて死亡した 。相次いで日本人学校の生徒が狙われている。中国には日本人学校が15校ある。世界一多い。特に上海には2校あり、マンモス校と言われるほど児童数が多い。小中高校があり、日本の学校と同様の教育を行っている。

 保護者は企業の駐在員がほとんどで、90年代後半から大手自動車メーカー3社と周辺企業が進出した広州など、認定校の増加は日本企業の中国進出ブームとほぼ連動している。 この日本人学校に対する批判が最近起きている。反日教育の結果だろう。敵を作り国民を鼓舞することは止めるべきだ。

 ネットでは配信者の男性が日本人学校脇の防犯カメラなどを見上げ、日本人学校はなぜこんなに閉鎖的なのかなどと話す。そのコメント欄には「なぜ中国に日本人学校が多いのか」「なぜ閉鎖しないのか」「中国の法規に従って認可を受けているのか」「中国人が入学できないのはおかしい」といった内容が書かれているらしい。

 以上の流れにある日本批判のテーマは「靖国神社」「軍国主義」「尖閣諸島」。昨年はこれが放射線への不安を煽る「福島原発の処理水放出」が加わった。未だに海産物の輸入は禁止である。と言いながら中国漁船の日本沿岸量は続いている。日本への電話攻撃が必要に行われている。中国の日本人学校にも石や卵が投げ込まれている。

 日中関係が日に日に悪化して行くことが実に悲しい。その原因は中国では就職できない若者が増加していることにあると考えられる。そして、失業者が徐々に増加していること。社会不安が増し始めている。高度成長にひずみがここに来て深刻化してきたことがある。

 一番のひずみは、経済格差だろう。中国は一応は共産党が一党支配しているのだから、共産主義国と考えて良いのだろう。何故共同富裕を掲げる国で、なぜ極端な富裕層と貧困層が存在しているのかである。しかも、その格差は日増しに深刻化している。

 これを解消できないとすれば、社会不安はさらに深刻化するだろう。日本人が狙われているのも確かではあるが、実際にこうした通り魔的な犯罪も増加しているらしい。特に日本人の小学生が狙われる背景には反日政策を政府が取っている事が影響していると考えなければ成らない。

 中国国内の不満層の不満の方向を政府に来ないように操作している。「日本が悪い、だから自分の暮らしが良くならない。」そうなると、現地の日本人が一番標的になりやすい。当分の間、中国に行くことはないだろう。今書いているこの文章すら、検閲の対象のはずだ。

 問題は習近平の独裁政治にある。習近平が正しいか間違っているか、その判断以前に独裁政治の国では、こうしたひずみが起き始めるのは確かだ。急速な経済成長を成し遂げた習近平は驚異的に有能なのだと思う。しかし、優秀であればあるほど、その独裁のひずみは深まる。

 中国経済は鈍化し始めた。それは当たり前の事で、あれほどの高度成長を続けてきた国が、どこかで成長速度が下がるのは経済の原理から言って当たり前の事だ。その時に様々な問題点が表面化してくる。特に中国はやり過ぎていたのだから、ひずみは大きく表れる。

 不動産価格の下落はよく言われるが、これは富裕層の問題である。不動産投資をできるような人はごく一部の人だ。格差の問題は社会全般に根深く広がっているはずだ。特に都市部と農村部の経済格差が深刻化しているのだと思う。所得の差は半分以下である。農村部の貧困は固定化されていて、希望がない。

 都市と農村の生活格差は40年間是正されていないとすると、私が農村部を訪ねた頃と農村の暮らしは変わっていないと言うことになる。その一方で、都市部の豊かさは、日本生活以上のものがある。30年前には上海でも当たり前のコーヒーを飲むことが出来なかった。持って行ったコーヒーを飲んでいた。

 日本であれば、地方の消滅である。所が農村部の戸籍の人間は、原則として都市部に移住は出来ないことになっている。と言っても豊かな都市部に出て、お金を稼ぎたいという人が、都市部に無戸籍になって出てくる。出稼ぎ農民の救済が政府の方針でもある。都市部には無職の人間があふれ出している。

 政府の方針を読むと、農村部の疲弊をどうやって救済するかが、繰返し出ている。しかし、それは実現できないまま、より深刻さを増していると見るほかない。以下の精神生活の共同富裕という考えは注目に値する。問題は理想と現実の乖離である。

人民の精神生活の共同富裕を促進する。
  • 社会主義核心的価値観(注3)による指導を強化し、人民大衆の多様な精神文化のニーズを絶えず満たす。
  • 共同富裕促進の世論誘導を強化し、共同富裕の促進に好ましい世論環境を提供する。
 (注3)社会主義核心的価値観とは、富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善のことで、2012年11月、中国共産党第18回全国代表大会における胡錦濤総書記(当時)の報告の中で初めて提示された。 
 
 中国ではどれほどの絵空事が唱えられているのかと思う。共同富裕を優先すれば、経済成長は鈍化する。富を集中させることで、国際競争力を高めてきた。富裕層を叩いて、分配を重視すれば、国としての経済成長は鈍化する。習近平政権は今この経済の舵取りに、苦しんでいるように見える。

 それが、ロシアと言う暴虐国家との連携になっている。経済を重視すると言うことは、アメリカとの経済競争に勝たなければならないと言うことだろう。アメリカもヨーロッパも、そして日本も、中国をこれ以上経済成長させないように、連携して対抗している。

 国家資本主議が自由主義経済の中で、優位と言うことなのだ。資本を集中できるのだから当然のことだ。中国は圧倒的な労働人口で競争に勝利をしてきた。ところが、労働人口で競争を有利にすることでは、インドや東アジアの国、そしてアフリカ新興国が、中国を凌駕しようとしている。

 世界全体で見れば、資本主義は限界に達し、成長はもうわずかな余地しか無くなっているのだろう。もう昨日より今日が豊かという資本主義経済の成長神話は失われたのだ。それがロシアの軍事侵攻であり、中国の覇権主義となっている。人を潰さなければ自分の生きる道がない。

 このままでは、世界は崩壊に向かう。習近平が示した精神主義は実態と乖離がすさまじい。国が国民の自由を奪い、監視社会になっている。今回の日本人学校の生徒の殺害も、報道は制限されている。人民の精神生活は枯渇している。あの精神性の深い中国人はもう少数派なのだろう。

 それは中国の習近平の後ろにある巨大な絵画が文化や精神の枯渇を表わしている。日本も絵画文化の衰退は同様であり、まるで中国を追随するような物が出現し始めている。あのこけ脅かしの中に、中国の精神の貧困があるように見えてくる。

 - Peace Cafe