種袋を作る。

   

種袋4枚。後ろには、大豆、小麦、大麦、米と書いてある。

種袋を作った。ミシン掛けは得意だ。種袋というものが昔からあるのかどうか、そういうことは知らない。結城紬の手織りの布である。30センチ×50センチくらいの大きさだ。柿渋で何度も繰り返し染めたものだ。10回以上柿渋液に浸しては乾かし。洗濯機で水洗いをして良く絞り、又柿渋に浸すの繰り返しである。気に入った色になるまで繰り返した。絹の布というのは丈夫なもので、布が傷むような様子は全くなかった。と言っても傷んでも構わないつもりであったのだが。この袋は実用というつもりで作ったものではない。柿渋の布に最もふさわしいのは、種袋だと思い込んだからやってみた。今度は実際に小麦の種を入れて、実用性を試してみたいと思う。種は冷蔵庫に保存してある。10数度にコントロールした冷蔵庫だ。自家採取した種は基本ここに入れてある。大豆の会の種大豆。小麦の会の小麦の種。欠ノ上田んぼのうるち米のサトジマンともち米の喜寿糯。これだけはいつもここに入れておく。以前は卵を保存していた冷蔵庫である。10数度だから冬の間は電気は入らない。

猫はどういう訳かこの布の上で寝るのが好きだった。野菜の種もいろいろ袋に入れてある。種を取るのが好きというより、だらしないから、取り遅れたものは種取りの為になってしまう。言い訳の結果の様なものだ。農作業の中で収穫が一番苦手だ。種まきに一番興味がある。芽が出るあたりから成長の過程はまだ興味があるのだが、実がなれば一度食べてみるとなんとなく安心してしまい、それっきりになることがままある。穀類ならそれで終わりだが、野菜だとその後がまずい、草取りもしないから草に埋もれて実っていて、種取りになってしまう。オクラとか、きゅうりとかピーマン、トマト、トオモロコシ、黒小豆(宮古島)、花豆(北海道の方からもらったもの)、ハト麦。などが今種としてある。本当に調べれば、さらに10種以上ある。封筒に入れてしまった気がする。由来を書いてあるはずなのだが、蒔き時を忘れてしまって、そのままになったようなものばかりだ。突然缶から出て来てびっくりする事がよくある。物を失くすという事はないのだが、仕舞い込みすぎてどこかえ隠れてしまう。

猫が机の下からのぞいている。床も柿渋で塗り、この戸棚も柿渋で塗ってある。

 

この戸棚になっている台に、青い毛氈を敷いてその上で書いた。いつもは床で描くのだが、今回は初めて立って書いてみた。絵を描くときの状態である。だから余計に描いたという方だろう。柿渋染めの布には防水性があるようで、墨は濃度がないと、撥ねてしまう。墨は今回は、古い墨をよくよく磨った。硯は中国に行ったときに、買ってきた丸るい直径30センチの大きなものを使った。もう20年は前になると思うが、硯は1000円しなかったとおもう。蓋も石でできたものだから、これは重かった。実は伝来の良さそうな端渓と言われている25センチの硯もあるのだが、なんとなくこれは使わない。毎日字を書くようになれば、この硯も使うようになるかもしれない。筆は8センチほど穂の長さの有る15ミリほどの直径の筆を使った。筆については夢中で集めたことがあり、山ほどあるという感じなのだが、使うのはほんの一部だ。これも価格は100円くらいの筆だ。

 

描いてから、猫にごろごろされたら困るので、吊るして乾かしてある。裏の大豆、米、大麦の字がすこし見える。外を眺めている影絵の猫がりん。外の縁台にいる猫がすず。猫はこうしてじーと眺めている生き物だ。寝ていないときは何かを見ている。何のために見ているのかはわからないが、眼を見開いて凝視しているかのようでもある。見ようとしているもの以外は目に入らない。わざと間に顔を出してやる。それでも私の顔が視界に入らないほど、何かを見ている。果たしてこれほど集中して物を見ることがあるだろうか。つまり、見ているように見えるが見ていない。見ていないようで実は見ている。猫の見方で物はみる必要があるようだ。

 

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