夏の拾い草

   

朝明るくなるのを待って田んぼに行く。拾い草をするためだ。これがすごく気分がいい。辛い草取りをやるというより、子供のころ海水浴に連れて行ってもらった時のような気分だ。あの土埃の道を海に近づいてゆく時の高揚感をを思い出す。田んぼに入るという期待感が別格である。どんな草が生えていることか。土の状態は、場所によってどのような変化があるのか。実験結果をみるようなことになる。草は生えているところと、生えてないところがある。これが何度草取りしてもわからない。自然の仕組みがあると思うのだが、この理屈がなかなかわからない。何となく草の生えやすいところというのがあるようなのだ。コナギの植物としての性格をいくら本や、インターネットで学んでみても、田んぼに現れる結果とは違う。自然の中で起きていることなのだから、必ず原因があり結果がある。不自然なことが起こる訳がない。ところが予想を外してくれるのだ。さて、今年はどうかということだ。

私としてはある程度想定に収まったという結果だった。土の状態は覆田して、4年目としては納得ゆく方向に向いてきた。河岸の流された田んぼにそのことが良く表れている。土をだいぶ客土した。得票度が変わっている。これがこの田んぼを不安定にして、一部黄色い、分げつが足りないところが出てきている。土が腐敗状態に向いたところもある。昨年、クワイを植えて、草ぼうぼうになった6番田んぼは、土の状態が素晴らしい。すきこんだ緑の草の量はすごかったが、今の段階では、最高の土の状態になっている。冬の間も、水が湧き出ていた傾向があった。さらに面白いのは、11番の今年何十年かぶりにたぶん40年間ぐらいは、田んぼをやらずに居たところの覆田状態である。この田んぼはその昔は、苗床に使うだけだったそうだ。それは一年通して使うと、穴があいてしまい管理できなかったと言われていた。確かに隅に大きな穴があったのだが、ここは徐々に大きな石を落し込みその上に土を入れて何とか表面的には平らに塞いだ。

田んぼを止めてからも、湧水が湧き続けていたようで、湿地状態だったと思われる。葦が生えてくる。始末の悪かろう荒れ地であった。ここを何とか3年がかりで田んぼに戻した。水は特に水路からはなく、湧水だけである。とても冷たい。確かに生育は遅れているのだが、だんだん追い抜くぐらいの勢いが出てきた。土もコロガシに入った時にはぐじゅグジュ、どよどよ状態で、メタンガスが湧き、臭かったが今はなかなか状態が良くなった。覆田一年目はどこでやっても良く出来るものだが、この状態を永続させることが目標になる。稲刈りの時だけ何とか水を切る工夫をする。あとは湧水だから、このまま冬水田んぼに持ち込もうと考えている。田んぼが面白いのは、作物をより多くの収量を目指すことが、未来のための土作りをしているという、永続農業の典型的なところだ。

抑草効果はソバカス抑草であるが、トロトロ層の形成にはある程度役立ったと思われる。生きものも昨年よりは多く発生した。トロトロ層が良くできると、コロガシを入れたときに、発芽した小さなコナギが浮き上がるか、あるいはふわふわの土壌の中に埋没しやすい。だからタイミング良く、田植え後1週間目あたりで一度目の横のころがし、2週間目あたりで2回目のたてのコロガシをする。これでコナギは一回目の対応が出来る。コナギの勢いがほぼ収まる。強烈な勢いで生えて来るコナギはなくなる。そして、4,5週目で、拾い草。ほぼこの程度で対応が出来る。ヒエは深水で確かになくなった。田植え以降深水を続けていたので、土は結構深くなっている。そこで、思い切って今年は星を16日から行っている。今日で3日目だが、雨が降って完全には乾かない。この後徐々に間断灌水の傾向を強めてゆこうと考えている。もう一度干すかどうかは、稲の状態で決めたい。

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