女流棋戦の妊娠8か月体調不良の不戦敗

   



 福間加奈女流5冠が白玲戦の2勝2敗で迎えた第5局、体調不良のために戦えず、敗戦になってしまった。たぶんこの後の対局も出場できないだろう。休場を申し出た。4日前の女流王将戦第2局も同様に体調不良で戦えず負けになってしまった。そのほかいくつものタイトルにかかわる将棋が不戦敗になることだろう。

 分ってきたことは両者が弁護士を立てて、対局について協議した結果、不戦敗が決まったようだ。こんな勝ち方で何が嬉しいのだろうか。何故、福間女流5冠の妊娠休場に対して譲ることが出来なかったのか。いくら勝負ごとであっても、どこか心の醜さを感じる。将棋棋士の魅力は勝負を離れれば、人間として理解し合っているところだと思う。

 日本将棋連盟は30日、福間香奈清麗(32)が二つの女流タイトル戦で不戦敗により敗退した問題について、双方が代理人の弁護士を立てて協議していたことを明らかにし、「本人は対局を切望しており調整したが、他棋戦を含めた年間スケジュールが厳密に決まっていたため、やむを得ず不戦敗の判断をした」と経緯を説明した。今後、産休に関する詳細な規定を設ける方針。
 福間清麗は8月、妊娠を公表。その後、11月17日から2025年2月12日までの休場を決めた。年内に予定されていた四つのタイトル戦のうち、タイトルを保持する女流王座戦五番勝負は第2局以降を休場明けに延期した。一方、挑戦者として臨んだ白玲戦七番勝負と女流王将戦三番勝負は、いずれも2回の不戦敗によって決着する異例の事態となった。11月5~11日の倉敷藤花戦三番勝負は延期も含めて検討中だ。ーーー毎日新聞

 女性棋士の妊娠出産に対する対応について、将棋連盟の判断は果たして妥当だろうか。藤井7冠の活躍で将棋界は今盛り上がっている。そして、理事長は頭脳明晰で、判断力のある羽生善治氏だ。現状出産と病気とが同じ扱いである。これは少し違っている気がする。
 既定が不備であったことをまず将棋連盟は謝罪しなければならない。社会が子育てを何より優先しようという時代である。その中で、まるで勝手に妊娠したのだから、自己責任だというような、時代錯誤の既定では社会に受け入れられる社団法人ではなくなる。

 女流棋士の西山女流棋士が棋士試験を受験中でもある。その西山女流、その試験対局の直前にコロナに感染した。こちらは試験日を確か1週間延期して対局した。しかし、体調が万全でなく敗戦になった。病気でも延期が認められたにもかかわらず、妊娠8か月に対して即敗戦はどうだろうか。

 棋士試験の対局は延期ができたわけだ。なぜ、白玲戦は延期ができなかったのだろうか。日程が詰まっているということと、延期してもこれからより厳しくなることが予想される。たぶんいくつかのタイトル戦に、このまま出場できずに、タイトルを取れないか、失うことになる。

 何か西山女流白玲が少し優遇されているようにも受け取れる。いずれにしても女流棋士の妊娠に対する対応を、将棋連盟は検討し直す必要があるのではないか。無理をして出場することも、身体と子供のために問題がある。対局の負担がどれほど大きいかは棋士ならわかっていることのはずだ。

 この判断を下したのが、あの聡明な羽生理事長というのも何かがっかりである。何故、女流棋士が、プロの将棋棋士に成れないかを考えると、何か今回の事件は象徴的なものに見えてくる。棋士たるもの妊娠などしてはならないということが、暗黙の了解にあるのではないか。

 もしそうであるのならば、将棋連盟の女性に対する対応が、時代の変化に遅れていると言わざる得ない。どこの会社、役所だって産休は当然認められている。どのような形で、認めるかの工夫は必要だろうが、何の対応策も取られていない将棋連盟の現状このままでいいとは思えない。

 女流棋士が普及のためには大きな役割を行っていることは棋士の皆さんが言われることだ。男性しか棋士がいない現状を何とか解消しなければならない。囲碁の世界はなぜか昔から男性棋士と同等の実力がある人がたくさんいる。将棋の何が女性の進出を妨げているのかを考える良い機会ではないのか。

 福間女流5冠も西山女流2冠もほぼ男性棋士と同じくらいの実力があると言われている。何か壁があるとしたら、女性であることになる。つまり、男性社会で女子が肩身が狭いとかいうのもあるだろう。また特別扱いが良くないということもあるのかもしれない。

 そして、結婚、妊娠、子育て、この女性の負担の大きさも考える必要がある。女流に対する特例を考えてもいいのではないか。そういう時代が来ていると思う。女性がもっと将棋を指すようになった方が、面白いと思う。男性棋士が何かを畏れているとも思えないのだが。

 それにしてもおかしいのは報道がこの問題を取り上げないことだ。女性の権利を報道機関は割合書いている。にもかかわらず、将棋連盟で起きている妊娠8か月の不戦敗問題を取り上げないのは、実はどう書いたらいいか判断ができないのではなかろうか。

 書かないということは、将棋連盟の今回の裁定を、女性差別とは考えていないということなのだ。勝負の世界はそういうことは事前にわかってやってもらわなければという判断なのだろう。一歩踏み込んで考えていないということになる。

 判断が難しいので、意見が書けない。もし、報道が取り上げるほどの問題ではないと考えていれば、それはおかしい。誰が悪いとか、羽生理事長がおかしいとかいうことではない。こういう理不尽なことが起きたのだから、今後こういうことが起きないような方策をみんなで考えてみようという提案ではないか。

 提案し、考えてゆく中で、日本の女性差別がどいうものかが見えてくるのではないだろうか。世界でも有数の女性差別国に挙げられているのだ。しかし、日本の女性差別はほかの国の基準で考えても少し違うと思っている。確かに差別があるのだが、その歴史を考えたうえでないと、海外と比較しても意味がない。

 勝負ごとを女性がやるなどはしたないということなのだろう。それが徐々に突破されてきたことはいい兆候ではないか。女性だからというような制限は少しでも減った方がいい。将棋の思考訓練は脳の活性化になるだろう。問題解決能力の向上に繋がる。

 私が絵を描くときの思考回路は将棋と似ている気がしている。最善手を捜しながら、画面のさきの先を読んで行く。こう描いたらどうなるだろうかという次の場面を想定している。藤井7冠は棋譜で先を読むと言うが、私のレベルでは次々と将棋の未来の場面を頭の中で展開している。

 西山女流は現在棋士試験を受けている。現在1勝一敗である。応援して注目していたのだが、今は落ちれば良いと思っている。棋士としての正義の気持ちが不足している。妊娠による不戦敗でも勝ちたいと弁護士を通して、話し合うなど何かが違う。
 
 

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