中国のSNSによる世論操作

   



 中国は監視社会になった。反政府的な人物の行動は政府が完全に把握できるようになっているはずだ。ただし、日本人を襲うような人物はむしろ無視されている人間で、社会から疎外され監視の対象にはされていなかったのだろう。

 20年ぐらい前になるのだろうか。農文協の誘いで中国のためになればと考えて中国に行き自然養鶏の普及活動をしたこともあるが、もう中国に行くことは出来ないと考えている。絵画交流団で上海と桂林に出掛けたこともある。中国には子供の頃から興味があったので、実に残念なことだ。

 SNSは国がコントロールしている。だから中国に流れているSNS情報は国が認めている物と考えて良い。例えば習近平氏を笑いものにするような物は、例え冗談だと明らかに分る物でも、摘発の対象になる。一方で日本を悪者国家として批判中傷する物は、いくらでも存在する。と言うか国がそうした扇動をしていると考えた方が良い。

 この日本を悪者に仕立てるやり方は「Twitter世論コントロールシステム」 と言うものでコントロールされていると言うことを、NHKが報道した。大量のアカウントを一度に操作し、特定の情報を拡散させることができる仕様になっている。

 SNS上で、標的となるアカウントを黙らせたり、自分たちに有利な言説を広めたりすることができる、その名の通り「世論操作ツール」が存在する。ボットと言うアカウントを作り偽情報を流す。実在する人間が投稿しているようにみせながら、背後でプログラムによって機械的に操作する

 NHKの追跡では、あるアカウントは、特定の時期に集中して投稿を繰り返すという不自然な動きもしていたことがわかった。投稿の中には、去年、東京電力福島第一原子力発電所から放出された処理水について、危険だという誤解を与える情報もあった。


 放出された汚染物質が海に拡散していくような印象を与える動画だったが、処理水とは無関係のシミュレーションのものだった。この反日情報の拡散のための投稿には、2000件を超えるリポストが行われていた 確認していくと、こうしたシステムを購入した組織の中には、中国の警察組織にあたる「公安」当局も記されていた。

 リストによれば、たとえば、チベット自治区のラサの公安局は、ほかの製品とともに、6000万円あまりで購入していたとしている。チベット族の間違った情報の拡散にSNSが使われていることは間違いが無い。この購入リストが正しければ、i-SOONの世論操作ツールは中国当局に使われている可能性がたかい。

 SNSによる世論の操作は香港で起きた暴動の時に始まったとされる。香港で暴動の鎮圧の成功で、SNS操作の有効を確信したのだろう。さらに広げようとしている。当然日本国内でも展開されているとしなければならない。それが放射能汚染水の海洋放出に対する、異様な中国の反発を生んでいるのだろう。

 世界中の複数の言語で展開されているという。十数か国語と数十のプラットフォームで活動している。目的は、政府や社会の制度、そして社会そのものへの信頼を攻撃し、弱体化させることにある。中国習近平氏は日本を敵視する世論を作り出し、自分の悪政への批判をそらそうとしているのだろう。

 先日の台湾の総統選挙の際には、生成AIで作られた、フェイクニュース動画が拡散された。現総統のスキャンダルを、女性が語るものだ。これは都合の悪い物を押さえるために、今後頻繁に使われるはずだ。私のような極小の物はまず相手にもされないが、影響力があると思われる人が悪用されることはあるだろう。

 最近投資詐欺に著名人が利用される事件が頻発している。あの人が言うのだから間違いないと思って、引っかかってしまうのだ。次の段階では全く当事者とは関係のない詐欺師が、その著名人がしゃべっているかのような動画を作り出すことで、投資詐欺行為を行うことになる。

 この技術を中国は国家として悪用していると思われる。ここまで来ると情報統制どころではなく、情報戦争を仕掛けていると言うことになる。習近平がかなり追い込まれてきていると言うことを意味しているのだろう。独裁政治の不安が、どこまでも人間を疎外して行く。

 しかしどこまで人間を洗脳しようとしても、人間には健全な復元力がある。中国人は極めて冷静な判断力を持っている。一反は習近平に飲み込まれたように見えていても、ただ静かに情勢判断をしているのだと思う。人間をそう信じているし、まして中国人のしたたかさを信じて良いと思う。

 中国人を信じる。確かに中国人は人間の質に、格差が大きいと感じた。中国に行ったときにお会いした立派な中国の人達は独裁者に騙されるような単純な人ではなかった。中国社会には正義が存在する。何時までもこの独裁状況が続くとは思わない。

 中国人は商人の思想が強いが、故人の自立は強く、一族で助け合う精神がある。社会正義は強くもっている。ここまでの中国の高度成長があまりに早く、社会がついて行けないのだろう。あの巨大国家を一つにまとめて、国家社会主義を行うと言うことの限界がある。

 不動産投資に富裕層や行政の幹部が巻き込まれていった原因は
、その意味では国家資本主義の限界を示しているのかも知れない。儲かることがすべてであると国が方角を示したのだ。それなら、行政と開発業者が利益を分け合うような形で、限界を超えた不動産投資が国全体に広がったのだ。

 当然のこと自転車操業になり、無用な建物が乱立することになる。と言ってもまだ不動産の値下がりは5%程度のようだ。半値ぐらいにまで下がれば、そこそこあの膨大な住宅に、暮らすことができる人が現われるだろう。暮らす家のない人口も大きい。

 全部が無駄になるわけではない。いずれ実需価格になるまで下がると言うことになる。そこに落ち着かせるためには、国が支出をする以外にないと言うことになる。国の方針が的確に行われれば、中国経済が崩壊すると言うことは無いはずだ。

 ただし、習近平の独裁政治がこのまま進めば、社会の勢いが失われて行くことになる。富裕層は一族の安全保障のために海外投資を強め、中国脱出の準備をしているに違いない。大学卒業者の半分が就職未定と言われている。この先若い人の就職先がないと言うことが一番問題になるだろう。

 監視社会。国の世論操作。拝金主義。自由の失われた社会では、人間は力を出し尽くそうとは思わない。習近平の顔色を窺うばかりでは、社会の活力は失われて行く。あまり感心の出来ないような人物ばかりが政府の人間になる。外務省が中国人が日本旅行に行く際には、気を付けなければならないと注意喚起を行った。まさかのことである。

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