のぼたん農園のこれから

   



 のぼたん農園はあと5年は私が元気で頑張るつもりだ。しかし、私が居なくなっても、自給生活のモデル農園として、続いて貰いたい。そのためにいくつかの計画を考えている。まだ、漠然としていることばかりなのだが、書きながら考えてみたい。

 第一には今まで通り、自給の為の米作りを続ける。そのお米を食べて貰える方策を考えたい。竈を作り、ご飯を炊いて、おにぎりを食べて貰う。食べて貰うことで、のぼたん農園の考え方を伝えることが出来るような形を見付けたいと思っている。

 田んぼを見て、そこで出来たお米を食べる体験をして貰う事も、自給農業の役割のような気がしている。お米の消費が減少していることは、食の多様化は人間の食の傾向として起こることだが、主食の意味をとらえ直して貰いたいものだ。

 お米のご飯は昔であれば、当たり前の誰でもしていた暮らしの豊かさである。ここにしかない特別な体験になるようなことをやりたい。たまたま観光できた人が、のぼたん農園のおにぎりを食べることで、何かを感じて貰えるかも知れない。そんなことを始めたいと考えるようになった。

 おにぎりはせいぜい一升釜でご飯を炊いて食べて貰うぐらいで良い。出来れば、水牛の糞でガスを発生させてエネルギーにするのも良いだろう。薪ならば農園の林掃除で出るぐらいの木っ端を使うのが良い。今都会ではおにぎりブームらしいが、のぼたん農園で、本物のおにぎりを田んぼを見ながら食べて貰いたいものだ。

 のぼたん農園の自給農業を伝えて行く方法は、お米だけではないはずだ。様々な材料がありそうだ。これを上手く来た人に繋げたいと思っている。思いつくままに、やれるかどうかは別にして、あれこれ上げてみたいと思う。

 7つの曜日毎の担当を決めるというのはどうだろうか。月曜日は苗の日である。のぼたん農園には「のぼたん」が群生している。のぼたんは沢山の種を付ける。種を蒔けば苗が出来る。苗を作り販売する。これは苗を商品にすると言うだけではなく、のぼたん農園に来てくれた人との思い出であり、繋がりである。

 その他、月桃とか、熱帯水連とか、ミズオオバコ、ミズワラビ、アカウキクサ。希少植物の苗も良いかもしれない。いくらでも増えて行く植物だから、欲しい人に頒布するというのでも悪くはない。一つの苗で伝えられることがあるかもしれない。
 
 火曜日は石垣島の伝統的な民具作りの日。月桃、アダン、タコノキ、などの素材になる植物が沢山ある。畑に植えて、増やす事も気候に合っているのだから難しくない。月桃の畑をまず作る。民具は完成品の販売と、製作場所の提供や技術指導と言うこともあるだろう。

 植物の材料を自分で採取して、作るというのも良いだろう。石垣島で民具作りを楽しんでいる人は沢山居るが、素材作りと製作場所に苦労していると聞く。のぼたん農園でここを提供できるかも知れない。何しろ自分で取るのであれば、素材は沢山ある。

 この材料作りが大変なのだ。伝統工芸は材料を作る人が居なくなり消えようとしている。採取した材料をカゴや草履を編む材料にまで仕立てるのが、作る以上に大変なのだ。これを作業所の仕事にしていたところもあるが、なかなか継続できないようだ。

 水曜日はおにぎりの日だ。まず竈を作る。竈で羽釜でご飯を炊く。その後半を石垣の塩で握る。当然お米はのぼたん農園で採れたお米だ。一日一釜限定である。100個ぐらいのものだろうか。もし余れば、自分たちの夕飯にすれば良いくらいの量が良い。

 木曜日は喫茶「のぼたん」の日。ジュースの日。パイン、バナナ、黒糖。コーヒーもあれば良い。木陰でユンタクしながら飲んで貰う。美しい石垣の海を見ながら、楽しんで貰えれば、格別のことになるはずだ。楽しくユンタクする場が出来れば、新しい繋がりが生まれるはずだ。

 金曜日は玄米パンの日である。これはパン作りをしている他の地域にあるパン屋さんの出店をやって貰えばどうだろうか。作業所と協働でやれないだろうか。同じパンでもお米から作るというのが良いのだと思う。どんな形が良いかはまだ見えないが、お互いに良い関係が作れるような気がしている。

 土曜日は油絞り。これは昔からの私の夢の一つである。やらぶの油作りである。タマヌオイルは、テリハボク“ヤラブ”の種子を搾って作られる植物オイル。ヤラブの大木が20本ぐらいあるから、種子は自給できるはずだ。やらぶのみを集めておく。来た人がヤラブの実の、仁を取りだし油絞りをする。

 油絞りは水牛にやらせることが出来れば一番良いのだが。そういう機械が作れるかどうかは検討する必要がある。水牛で絞るという所が何か良い。こういうことを事業としてやりたいという人は必ず居るはずだ。やりたい人を応援できればそれでいいのだが。

 やらぶオイルは今注目されてきている保湿オイルである。搾りたてのオイルは黄金色で濃厚なナッツの香りがします。角質層にすっと浸透するためべたつき感がなく、その優れた保湿・抗炎症・抗酸化特性から、近年多くの注目を集めているという。

 日曜は水牛の日。水牛車の運行。水牛の農作業体験。水牛黒糖絞り、水牛と海岸へ行っての写真撮影。水牛という家畜の大切さを伝えて行くものにしたい。沖縄では各地に水牛車はあるが、実際の水牛農作業を残して行くことが大切だと思う。


 曜日毎に、グループ毎に担当者がいたら始める。居なければやらない。いつか人が揃い、全体としてのぼたん農園の活動になって行くことになれば良い。やりたい人がやる。やる人のいくらかの収入になれば良いと思う。石垣島で分ったことは、収入がなければ継続できない人が多いと言うことだった。

 これからの時代経済の厳しい時代に入り、若い人達にはただ好きなことだからと続けていられないのかも知れない。いくらかの収入源が、のぼたん農園に必要になって行くのかもしれない。小田原の自給農業の専念とは違う方向を感じている。

 7つの事業のどれから始るのかも分からない。誰かやりたいという人が居なければ、何も始まらないのだろう。それでも構わないことだが、やりたいという人が居たときには協力をして行きたい。問題はその経営の形だろう。一番簡単なことはその人に給与を払いやると言うことだろう。

 多分給与方式は上手くは行きそうもない。すべての事業化計画はやる人の工夫と努力になる。その人自身の仕事として取り組んで貰わなければ、上手く床ない気がする。この辺りの仕組みの作り方が、検討しなければ上手くゆかないことだろう。

  

 - 楽観農園