共同富裕について

   



 中国は共産主義を国の基本思想としながら、市場経済を重視し国家資本主義と言える独特の態勢を作った。天才的経営者鄧小平の行ったことである。国が経済のために権力を行使し、資本を自由に操作し、経済成長を目指す仕組みを作り上げた。その結果、自由主義圏の資本主義を上回る経済成長を達成した。

 政府は一部の有能な経営者に権力と利権を集中させることで、効率化を図り、世界での競争に勝ち抜く事を達成した。国が一部の企業途連携して企業運営を行うために、効率的にしかも迅速に企業の運営が行われた。その結果、恐ろしいほどの格差社会という、あり得ない共産主義国家で生まれた。

 企業の後押しとなる、インフラ整備を国策として急激に成し遂げた。水、電気、エネルギー、道路、鉄道、港湾、空港、ITインフラ。日本の数倍の速度感ですべてが変っていった。習近平はその発展版として海外まで広げて、一帯一路を始める。あらゆる分野で近代化を一気に行い達成しようとしている。その世界制覇の野心が、世界中から警戒されている。

 教育の整備も企業が必要な人材の育成という意味で、最先端の教育が準備され、多くの家庭が高等教育を受けさせるために、最大限の努力を払う。一族主義だから、成績のよい子供に、よい大学に入り、よい企業に就職すれば、一族が富裕層になれる。明確な目標の下に一気に教育水準が上がった。

 学問研究分野では有能な知能を、好待遇で世界から導き入れて、研究論文数では世界トップクラスになる。模倣の国として、特許を盗む国とされていたが、中国発の新製品の国に変わり始めている。次世代エネルギー分野では中国がトップクラスとなっている。

 農業に於いても、品種改良や農業技術の革新もめざましく、食糧自給に向けて精力的な努力が続いている。稲作では日本では研究費不足で、新しい品種改良の努力が十分でなくなっているというのに、中国ではむしろ基本的な基礎研究の厚みが生かされ、食糧増産に繋がっている。

 世界との経済格差を短期間に一気に埋めたと言える。この間鄧小平が権力を振るい、なりふり構わず、黒い頭の猫もネズミを捕ればよい猫だということで、経済成長を一辺倒に目指し、貧しい国から抜け出すことに成功をしたが、当然悪い汚職体質のようなものも蔓延した。

 汚職をしても経済をよくすればよい官僚だったのだ。しかし習近平時代になると、汚職撲滅を建前として、競争相手になりそうな人材を失脚させて行く。これで経済が衰退するのであれば、習近平も失脚するのだろうが、経済運営のほうは、成功させている。

 一帯一路政策を進めて、国内的な限界を海外との関係で経済成長を成し遂げている。アメリカから圧力を加えられながらも、今や世界第二位の経済大国になり、遠からずアメリカを追い越すだろう、と言われている。ここからが習近平路線の正念場になるのだろう。

 そこで登場したのが「共同富裕」のスローガンである。これは毛沢東時代から言われた共産主義国家としての基本理念だ。建前としてだけ残っていたものを、習近平は改めて「共同富裕」を持ち出し、一部の気に入らない富裕層を締め付け始めた。その一つが不動産投資への資金の締め付けである。

 習氏は共産主義と経済発展のその両方を成功させたいと思っているのだろうが、ここからが難しい舵取りである。中国経済の活力という鄧小平の偉大なる業績に傷をつけることは避けられない事態になっている。習近平好みの頭の猫がネズミを捕るとは限らないわけだ。

 世界価値基準が要求されたときに、中国の東洋価値観が、世界に受け入れられるのか。東洋と西洋にぶつかり合いが起こるはずである。習近平が本当に有能な人物であれば、アメリカとの友好関係を築けるはずだ。アメリカと対立を続けていたのでは、中国の安定的な成長はない。

 日本が急速な経済成長を達することが出来た原因は国防に力を入れずにすんだアメリカの属国化である。あくまでアメリカにしたがうということにあった。よく言えばアメリカと上手く調整をしてきたと言える。アメリカの許容範囲で日本は成長を出来た。その限界が今きているのだろう。

 中国はすべてに大きな国だ。国土も人口もアメリカよりもはるかに大きい。総合的にアメリカを越えて行くしか方法がない。そうでなければ、自由主義国家は中国との対立を、さらに深刻なものにするだろう。国家資本主義の有利さが、国際的な競争の公平性の問題になる。

 現状では中国国内にある、人権問題などを問題視して、批判しているのがアメリカ。日本の在日朝鮮人問題や部落問題も解決困難な人権問題である。アメリカの人種差別問題を考えれば、よその国を責められないほど深刻である。頻繁に起こる銃乱射など、先進国では考えられないほどの野蛮だ。

 環境問題、温暖化対策でも中国はすでに先進国にもかからず、後進国レベルだと批判されてきている。この点では中国は急速に改善が進めていると言える。本来であれば日本は福島原発事故後、目指すべきであった環境経済大国はアベ政権があまりに無策なために、中国に敗れた。

 中国では水資源という国家
の基本が揺らぎ始めている。工業用水は増大した。生活水準が上がり、生活水の必要量も増加している。その結果どこの都市でも水不足が始まっている。森林が少なく、砂漠化が進んでいる。異常気象が続く中、水資源の限界から、渇水と洪水を繰り返すことになっている。

 急速な工業化の結果、工場排水の不十分な管理で、水質汚染が起きている。長河のように標高差のない流れは、水が不足すると忽ち淀みになり、酸素不足で腐敗を始める。農業用水と排水との切り分けがない地域では、その腐敗しがちな水で稲作が行われなければならない。

 今後環境対策は今後の中国の最大の課題になるだろう。中国には13億人が暮らしていて、1人当たりの耕地面積は0,09$33CAである。世界平均が0,3$33CAだ。国内で食糧自給をするためにはぎりぎりのところである。日本は0.03$33CAでさらにひどい状況だ。中国よりはるかに深刻な状況だが、放置されている。

 日本では法人税だけが減税が続けられてきた。企業を保護して、新産業の設備投資を期待はした。ところが、企業は内部留保や株式投資だけをした。アベノミクスが成功出来ない、自由主義経済の失敗である。これが、国家資本主義の中国に後れを取る原因である。

 中国は様々な深刻な問題が起きてはいるが、日本よりは迅速に、合理的な方向で改善が進んでいる。水問題も政府が全力で取り組んでいる。これも独裁政治の結果である。岸田政権が経済政策と言っても、誰も期待すらできない。その意味で習近平の「共同富裕」にはまだ希望はある。富裕層への圧力は強まっている点日本とは違うような気がしている。

 共同富裕が成功すれば、中国は世界一の経済大国になるだろう。日本ではやっかみ報道ばかりで、本当の中国の現実を見ようとしない。確かに中国の問題点も有り余るほど在るが、中国の希望をよく見ておかなければならない。日本も是非共同富裕を取り入れてもらいたい。

 - Peace Cafe