どこが異次元の少子化対策、か。

   

 「異次元」と位置づける少子化対策をめぐり、社会全体の意識、構造を変えてゆくと岸田総理大臣は語った。家に帰る車のラジオで、どこが異次元なのかと考えながら聞いていた。異次元というのだから、今までとは違う、世界が驚くような考え方が登場するのかと思っていた。

 ところがどこまでも常識的な、官僚の書いた文章を読み上げているだけのように聞こえた。いかにも官僚が考えるような政府の行うべき範囲を心得た、効果はない政策を並べただけである。画期的な政策を打ち出すときには未だかつてない、国民があっと思うような要素がなければ効果がないと思う。

 岸田さん自体が官僚のような常識人だから、田中角栄のような、異次元への発想の転換が出来ないのだろう。異次元まで進めたつもりで、普通の人の常識の範囲なのだ。せめて目新しいことがどこかにあるのか、家に帰りネットの新聞を改めて読んでみた。

 この政策で少子化が終われば、失礼なことを書いていることになるが、これで少子化が終わるようなことは間違っても起きない。「産めよ増やせよ」の標語が批判されているが、戦争をやりながら産めよ増やせよとは、とんでもないことだ。非常時で、その時の方が人口は増えたのだ。まさに今思えば異次元である。

 岸田氏が悪いというのではない。政策として上げられたことはやるべきことばかりだ。これは子供を大切にすると言うことで、必要な政策だ。今までやらないで来たことの方がおかしい。保育園待機児童がが3200人に減ったとか胸を張っていたが、未だに待機児童がいるのは政府の責任であり、政府に政策に問題があるとは思わないのだろうか。待機児童が減った背景にはその少子化があるのではないかと言いたくなる。

 岸田氏の少子化対策の基本理念は、
第1に若い世代の所得を増やすこと
第2に社会全体の構造や意識を変えること
第3に、全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること   
 以上の三つだ。 なんともなあー。そうだよななー。だめだろなあー。と言う感じがしてしまう。

 まず所得が少ないことを上げていることが良くない。貧乏人の子だくさんという言葉があるくらいで、子供を沢山作り子供に働いてもらい、豊かになろうという時代もあったのだ。社会に流動性があった時代だ。末は博士か大臣かというような、何とかなるかも知れないという機運が社会にあれば人口は増加して行く。

 10人子供がいれば、一人ぐらい優秀な子供が生まれて、家族みんなの面倒を見てくれるという発想である。明治時代は日本の歴史上もっとも悪い時代であったとおもうのだが、人口増加を続けている。一族や家族の暮らしを大切にした江戸時代と正反対に進んで、人口爆発である。

 江戸時代は少子化の時代だ。社会が停滞しているから、家族が増えることが出来なかった。農地が限定されているから、次男以下に農地を分配できなかった。明治以降社会が流動化して、頑張って成り上がろうという時代は、江戸時代以上に貧しくとも人口増加が起きた。都市人口の極端な増加。

 訳が分からない時代こそ人口増加時代になる。それは戦後社会もそうだ。この先どうなるか分からないが、おもしろくなりそうだという機運が人口増加を生んだ。岸田さんに不足しているのは、社会を打ち破るような未だかつて無い希望を生む異次元の発想だ。

 もちろんそんなものは誰にもない。だから、訳の分からない要素のある発展途上国は人口増加が起きて、落ち着いてしまった経済停滞国では人口が減少する。先が見えてしまっているからだ。大家族主義のあの中国ですら、一人っ子政策を止めても人口増加には転じないのだ。

 異次元をいうなら、日本の経済を異次元の発展をさせることが出来るならば、少子化は解消されるだろう。しかし、そんなことは誰にも不可能である。これからは安定した停滞の時代なのだ。そのことを受け入れているから、認めざる得ないから、少子化が起きているのだ。

 韓国は日本以上の少子化に陥っている。韓国がやっていることはだいたい日本の一歩先だから、さらなる少子化が日本でも起こると考えたて置いた方が良い。韓国の深刻な学歴社会。階層化した社会。希望の失われた社会。その意味では日本より深刻な状態だ。

 もし異次元の少子化対策があるとすれば、子供3人になれば、それだけで暮らして行けるというぐらいの現金給付である。少子化を解消するためには、一人の子供に月々10万円支給するぐらいの異次元さが必要である。そのくらいのおかしなことをすれば人口増加は起こる可能性がある。

 馬鹿げているが、それくらいのことでもしなければ人口の増加は起きない。世界の潮流に逆行するということは、そういうことではないかと思う。そうした無理は必ず社会にひずみを生む。やらない方が良い。岸田氏の子供を大切にする政策ぐらいが良い。

 岸田さんの異次元ではない常識論の範囲でしか仕方がないとは思う。それでも少子化は止まらないだろう。むしろ人口減少を受け入れて、それで国を成り立たせるほか無いと言うことだ。発想を転換すれば、人口減少が良い結果をもた
らすことも色々ある。

 明治時代など、棄民といえる移民奨励策まで行って、人口増加に対処しなければならなかった。さらに台湾、韓国の植民地化、満蒙開拓で、満蒙国を作り、増え続ける人口の行く先を作らなければならないこともあった。しかしその帝国主義的発想が第2次世界大戦の敗北に繋がって行くのだ。

 人口が増えないのであれば、日本列島の中で充実した暮らしを考えれば良いだろう。過疎地域の解消など、大いにやりがいがある仕事だ。食糧自給策でも良い。それこそ新産業の創出を国家プロジェクトとして、取り組んだらどうだろうか。先ずはアイデアの大募集をする。

 食糧自給生活を推進したい。地方にそうした自給生活地域を点在させて行く。そのことが日本を心豊かな安定した国にするはずだ。人口が少ないほど暮らしやすいはずだ。6000万人ぐらいが良いと思う。たぶんそのくらいまで人口は減少するのだろう。
 
 

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