1971年石垣島の191日雨の降らない大干ばつの記憶

   



 昭和46年3月~9月(1971)石垣島は大干ばつに見舞われ農業は壊滅的打撃を受ける。(連続干天日数191日) 南西諸島では稲作1期作の期間3月から9月初めまで少雨が続き、大干ばつになった。アメリカ支配が終わる前年のことだ。今年の小雨を経験して、1971年の大干ばつの話が語られることが多い。

 特に宮古島、石垣島方面でひどく、6月に入ってからは草も枯れ、水もなく、牧牛の餓死が始まった。これを考えると耐えがたいものがある。また、さとうきびは大部分が立ち枯れた。各島では飲料水が無くなり、本土から運んだ。

 なんということか、こんなことが現実として存在したのだ。農作物もほとんどが枯れ、離島を迫られ騒ぎにまで発展した島もあった。この干ばつのことを記憶していた人は、本土の人でどれだかけいただろうか。私も大きなことは言えない。知らなかった。

 沖縄地方と奄美地方では平年より12日遅く梅雨入りしたものの、沖縄地方では平年より13日、奄美地方では18日早く梅雨が明けた。この大干ばつを契機に石垣島のダム整備が進んで行く。伝説の大干ばつから50年以上が経過したのだ。

  191日雨が降らないということがあるのだろうか。まったく恐ろしいことだ。半年以上雨がないということは考えられれない。で、も、石垣島では、それほどの干ばつがあったのだ。島の極端な気象は、どんなことでもありうるということだろう。草が枯れて、放牧牛が死んで行く姿をどう想像すれば良いのだろうか。

 1971年は金沢にいた学生の頃の話になるわけだが、まったくこのことを知らなかったのは情けない。この無知は日本人として恥ずかしいことだ。沖縄返還の問題が本土の沖縄化と言われて国会で問題になっていて、心を騒がしていた。にもかかわらず、沖縄の実態を知らなかった。

 沖縄出身の英語の教師の饒平名先生が世田谷学園にいた。その人はアメリカの軍人と喧嘩するときには、まずつかんで転がすことだといったことを覚えている。寝てしまえば身体がでかいのはたいしたことは無いと言っていた。そうした沖縄の暮らしの実情までは見えていなかった。

 50年経ってみれば、沖縄を日本本土の前線基地にするということだったのだ。沖縄は防人の島ではない。沖縄に前線という厳しい状況を押しつけておけば良いというのは余りにひどくないか。東京から長距離ミサイルを撃てば良いのだ。首相官邸にミサイル発射台を作れ。

 水を汲みに行っている農業用水は名蔵ダムからの水である。以下石垣島の灌漑工事の経過を記録して見る。

昭和46年(1971)3月~9月 石垣島は大干ばつに見舞われ農業は壊滅的打撃を受ける。(連続干天日数191日)
昭和46年(1971)10月 石垣島農業開発調査団が来島同調査団により名蔵川流域かんがい計画の大要がまとめられる。
昭和47年(1972)5月 沖縄県本土復帰 沖縄開発庁沖縄総合事務局石垣島農業開発調査事務所設立
平成3年(1991)2月 名蔵ダム本体工事着手
平成9年(1997)5月 名蔵ダム試験湛水開始(平成10年8月完了)
平成11年(1999)1月 名蔵ダム工事完成検査

 30年かけて完成したダムの水が、今年の小雨で農業用水として使わせて貰えるようになっている。200ℓ10円である。意外に濁った水である。於茂登岳の麓に名蔵ダムはあるから、透明で美しい水かと思ったのだが、濁った水である。畑で使うのだから、もちろんそれで十分なのだ。

 島という場所で暮らして行くためには命の水である。水がなければ暮らすことが不可能になる。現代の暮らしは昔の暮らしに競べて、水を大量に使う。たぶん10倍ぐらい水を消費しているだろう。観光客は住民の倍は水を消費すると言われている。

 水がなければ観光も不可能になるということだ。水を大切にする農業といえば、田んぼである。田んぼはダムであり、治水であり、地下水の涵養である。島の田んぼが無くなれば、地下水の減少も起こるはずだ。田んぼを続けることは地下ダムを造ることと同じくらいの効果なのだ。

 宮古島の地下ダムは総事業費523億円 費用がかかったと聞いた。世界最大級の地下ダムである。宮古島という、山のない珊瑚礁の島では、地下ダムを造るしかない。地下ダムが出来て、宮古島の暮らしは、安定した。水が不安では暮らしは成り立たない。命の水を実感する。

 田んぼダムは地下水を涵養する。たんぼが作られていることは、ダムが出来たようなものだ。田んぼや溜め池で水を溜める。降った雨を流してしまわない仕組みを考えるべきだ。田んぼはお米を生産しながら、地下水も増やして行く。

 田んぼに溜められた水は60%の水が高いに浸透して行くと言われている。これは土壌によって随分違うだろう。代掻きのやり方でも違ってくる。石垣島の土壌であれば、40%ぐらいかも知れない。それでも降った雨を田んぼは旨く地下に浸透させる。

 現在石垣島は水量が減少したと、皆さん言われる。降る雨が一気に海に流れ出てしまうからだと考えられる。樹木に覆われた山が減少している。山だったところが、自衛隊基地や、ゴルフ場や、牧場に変わっていく。田んぼがサトウキビになった場所もある。

 地下水を涵養することが自然豊かな島を作る大切なことではないだろうか。地下に南百億円のダムを造らなくとも、石垣島では田んぼが出来る。ダムや溜め池で溜められた水を田んぼで使えば、上手く地下に浸透させて行くことが出来る。

 地表が乾燥していると、降り注いだ雨も地下に浸透せずに地表を流れ下って行く。しとしと雨が長く続く方が、地下水は増加する。同じ雨量でも短時間の激しい雨は流れていってしまう。どこかに溜めなければ、水資源が利用できないことになる。

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