アカウキクサについて

   


 写真はアカウキクサが地面に接触して、繁殖が盛んになったところ。アカウキクサは11月頃ほとんど姿を消した。また1月になり、所々で姿を現し、2月になりだんだん広がり始めている。しかし、そう簡単に水面を覆い尽くすと言うことは起きていない。

 先日の水共生ワークショップで、西表で作った池が、アカウキクサで覆われて困っているという話が出ていた。西表にもアカウキクサがあるのだと思いよかったと思ったのだが、なぜアカウキクサが増えすぎるのかに興味が湧いた。何かの理由が必ずあるはずだ。
  たぶん農業の場面ではそれほど広がるものではないのだと思う。手入れがまったくされない、ビオトープのような場所では水面を覆い尽くすことがあるかも知れない。現代のようなものの移動が激しい時代、ビオトープをやれば、例え世界遺産の西表島でも、おかしな偏りが出来ることがある。

 アカウキクサは一般に言われるアメリカから来た、アゾラとはちがう。アゾラほどの繁殖力は無い。窒素固定能力もアゾラよりも低いとされている。農業として考えれば、特定外来生物のアゾラの方が利用価値は高いのだが、さすがに外に出た場合の異常繁殖があるので使うわけにはいかない。

 アカウキクサが覆い尽くした池には、水に流れが足り無いのかもしれない。表層水から排出されるように池を直せば、アカウキクサが溜まることはない。川平のサイエンスガーデンでもアカウキクサが溜まると言われていた。理由は化学肥料の富栄養化だと言われていたが、もう少し観察が必要である。

 熱帯水連も池を覆うので心配だと言われていた。熱帯水連に池を覆ってしまい困るほどの繁殖力のある、園芸品種はあまりない。そんなに困るほど増えたらそれこそ、熱帯水連販売業者になれる。のぼたん農園のお土産品に出来る。

 お米を作るより、熱帯水連販売の方を営業に取り入れた方が良い。残念ながら今のところそれほど増えては居ない。1年前に4株入れたものが、今6株になったという程度である。美しい花は必要だと思っている。石垣固有の花だけでも良いのだが、ちょっと熱帯水連の美しさにはかなわない。

 池を覆ってしまって困ると言えば、田んぼの稲の方だろう。まさにイネは日本のものではない。帰化植物であっても、なかなか栽培が難しく、そう簡単に放置していて増えるようなことはない。良い状態に管理すると言うことは、何でも日常の手入れである。
 自然を豊かにするのはちょっとした手入れの連続だ。よく手入れされた自然栽培の田んぼは3000年自然と調和してきたのだ。人間が生きて行くために必要不可欠な食料生産の場所が、自然破壊を最小限にとどめているのが田んぼだ。

 のぼたん農園の溜め池だって、繰返しコナギが出てくる。溜め池はコナギの草取りをしなければ、忽ちコナギだらけになる。ミズオオバコとミズワラビが希少植物だからいいが、一向に減らないコナギは迷惑なものとなる。農家にしてみれば、ミズオオバコも、ミズワラビも、コナギもひとしく迷惑雑草なのだ。

 有用植物と、雑草とどこが違うのだろうか。珍しいから尊いとは言えないのかも知れない。ヘラオモダカだって花が美しいと言えば言える。歌舞伎の市川團十郎の屋号である。ヘラオモダカは漢方薬の材料になれば、有用植物であり、田んぼ雑草であれば迷惑千万なものになる。

 いずれにしても、西表の溜め池に肥料も入れないのに、アカウキクサで覆われたとすれば、何か原因がある。一度その池をみてみたいものだが、5月頃になれば、西表に行けるかも知れない。5月か、小田原の田植えか。無理かな。西表の高相さんのところに伺い、草取りぐらいやれることがあればやりたい。

 アカウキクサは雑草を抑える効果がある。アレロパシーがあるといわれている。だから、他の植物を抑えて、繁茂して行く。そうした他の植物を凌駕する能力を持つ植物というものがある。そばなどもアレロパシーがある。幸いイネ科植物には影響が少ないとされている。

 アカウキクサを繁茂させてどうなって行くのか。これから注意深く観察したい。のぼたん農園から外に出る可能性はほぼ無い。よほどの土石流でも起これば別だが、普通の大雨ぐらいでは水が外に直接は出ないようになっている。アカウキクサの純粋種は今や希少生物である。私が知る限り、石垣島では4カ所しかない。

 熱帯地域のアカウキクサ利用はベトナムや中国南部では11世紀頃から、水田緑肥として、利用されてきた歴史が在るものだ。現在、日本本土では特定外来生物としてのアゾラが、危険視されている理由は、稲作農業が化学肥料に変わったためと考えるほか無い。

 特に熱帯地域の稲作では腐植質が失われて行く。強い日照と高温のため腐植の分解が早すぎる。それを補うものが、ベトナムで生まれた水田のアカウキクサの利用だったはずだ。1ヶ月に1反4キロの窒素固定をする能力があるとされている。水田では月に1キロぐらいの窒素固定が行われると考えて良い。

 アカウキクサの増殖が上手くゆけば、アカウキクサだけで十分な肥料が期待できると言うことになる。この窒素固定能力は
マメ科の緑肥植物のヘヤリーベッチやレンゲなどと変わらないほどのものなのだ。緑肥作物は案外に栽培が難しいところがある。

 アカウキクサも今のところ簡単には田面を覆うと言うほどの繁殖はしてくれない。どのような条件で上手くアカウキクサを広げられるかを、観察して行かなければならない。今のところ水田では広がらないで消えて行く場合の方が普通だ。

 フィリピンではアゾラ緑肥利用は行われて居なかったのだが、その技術を日本からの指導で行ったことで、一気にアゾラ利用が進んだという。その理由は池で、アヒルを飼う伝統があり、アヒルの餌にもなると言うことで、アゾラの利用が進んだようだ。

 フィリピンの気候であれば、水田にアゾラを広げることは簡単なようだ。果たして石垣島の気候で、アカウキクサがどの程度の繁殖力になるかはこれから観察して行くつもりだ。フィリピンではまず田んぼに水を張り、そこに池で増殖し保存してあったアゾラを投入する。

 その後水田の代掻きを行い、アゾラを漉き込み緑肥にする。フィリピンではこの時水牛を使った代掻きが行われている。水牛とアカウキクサ。熱帯稲作の姿である。のぼたん農園では田車でコロガシ中耕して、アカウキクサを漉き込んで行くつもりだ。

 また漉き込まないでも分解され自然に田んぼの土壌に混ざって行くものも多いと考えられる。アゾラは16度から30度が生育の最適温度。中国南部では2月から5月が繁殖が盛んな時期。ベトナムでは1月が最も生育が盛んになる。

 アゾラの栽培ではリン酸肥料不足が起こるとされていて、肥料不足になる場合は水を浅くして根が地上に近づくと、アゾラは元気を取り戻し繁殖を広げる。リンを増やすために一番良いのは、籾殻クン炭。籾殻をそのまま戻すのも良い。バガスにもリンは含まれているから、田んぼにバガスを入れることも試したい。またバガスをもらいに行きたい。

 - 楽観農園