違和感のある日米首脳会談
発芽を始めた小麦、ニシノカオリ。
1月13日バイデンアメリカ大統領と岸田総理大臣との首脳会談が行われた。共同声明には当たり前の事が羅列されてはいるが、共同記者会見が無かったと言うところに、日米の隔たりがあると考えなければならない気がする。日本の防衛費の増額を諸手を挙げてアメリカが喜ぶと考えることがおかしい。
岸田氏は防衛費増額を行いましたと、喜んで貰えると勇んで報告したのだろうが、アメリカはそう歓迎したものでもなかったのではないだろうか。。日本が武力を増すと言うことは、日本が自立すると言うことで、アメリカの言いなりにならなくなる畏れが出てきたのだ。
日本が専守防衛路線を捨てると言うことはアメリカにとっては、有り難い反面不安が増したはずだ。日本はアジアの黄色人種の国である。アメリカ人の大半の人にとって、中国と大きくは違わ無い国に見えている。今度は中国主導の大東亜共栄圏の悪夢を思い出す人も居るはずである。
日本と中国を仲違いさせておかなければならないというのがアメリカのこれからの政策になることだろう。アメリカに依存しなければ日本の安全保障はない。この状態はアメリカには悪いことではないのだ。日本がアメリカに逆らわないで、言いなりになる状態がアメリカの安心なのだ。
アメリカは日本が反撃能力を高めるなどと言うことよりも、黙って日本の基地を利用させてくれて、すべてを駐留米軍の費用に当てる。日本が全面的に米軍の費用を持つという形を望んでいるはずだ。日本はお金だけ黙って出していれば良いという、日本の利用形態である。
その意味で岸田氏が行く前に希望していた、核軍縮をG7の議題にすることを、上手くかわした形になったのも当然のことだ。核軍縮などアメリカにとって、どうでも良くなっているのだ。ロシアが核軍縮の約束を放棄した。さらに中国は米ロに並ぶ核大国になろうとしている。問題の核心はここに在る。
この状況ではアメリカも核爆弾強化を考えているはずだ。日本の建前の核軍縮など、鼻にもかけないのは当たり前の事だ。日米同盟強化の背景に本当にアメリカが日本を信頼しているのかどうかである。日本はどこかで中国側に着くかもしれないと考えて、アメリカは不安を持ちはじめたのが今回の日米首脳会談ではないか。
日本側にしてみれば、日本は自由主義国の一つで、欧米G7分の1国であると考えている。しかし、日本だけ黄色人種の国なのだ。かつては戦った相手である。それほど甘い考えで日本を見ているはずがない。白人は基本的に黄色人種を何を考えているのか分からない、機微の悪い連中だと思っている。
トランプの態度を見れば、日本などどうでも良いというのが本音だろう。アメリカは世界1でいたい国なのだ。自分たちだけが豊かであればそれでいい国なのだ。アメリカを甘くみない方が良い。アメリカの中には確かに善意がある。しかし、それを上回る独善も存在する。
今回の日米首脳会談では、日本は反撃能力も持ちます。これが何時アメリカに向けられるか分かりません。こういう報告の会議だったと考えなければならない。次の段階では核兵器を日本を持つべきだという話が、日本で始まるはずだ。世界の状況の悪化はそのような方角で進んでいる。
日本がやるべきことは、日米が連携して、台湾問題の平和的解決である。このことは実は首脳会談の主要テーマの一つだ。平和的解決は習近平も第一に語っている。今回の日米首脳会談でも共同声明に書かれている。ではどうやって進めるかの具体策があるのかだ。
共同声明では平和的解決の具体策らしき気配もないのだが、きちっと台湾と日本とアメリカが話し合うのが第一歩だ。話し合いを保つことだけでも中国はいきり立つだろうが、3カ国でどういう条件になれば、一言で言えば台湾の民主主義が守られる形での、統一の具体案である。
平和的な解決の中身を話し合い中国に示すことだ。こういう形で、台湾の民主主義が守られれば、台湾は統一を受け入れると言うことまで、日米台の3カ国で話し合わなければならない。もし、韓国、フィリピンも加わってくれるならより望ましい形が出来るだろう。
その形が出来て、台湾から中国に示すことができれば、中国が例え拒否するにしても、その拒否の仕方で、中国の台湾に対する支配の形が見えてくるはずだ。中国が台湾の民主主義を認めないというのが、話し合いの中で明らかになるのかも知れない。
そうであれば、習近平の独裁政治を受け入れないという、台湾の姿勢を認める世界の国が出てくるはずである。日本も、アメリカも、台湾という不安定な状況にどのように関われば良いかが見えてくるはずだ。
世界に国として承認されていない、台湾と言う地域は、70年も独立国家のつもりで、民主主義国家を成立させたのだ。その見事さを世界の民主主義国は評価しなければならない。台湾の努力を無にしてはならない。民主主義は育てるものだ。日本が民主主義国家であるなら、台湾を支持すべきだ。
中国の状況を分析すると、3年間はまだ猶予がある。3年間かけて、中国は台湾併合を目指して軍事強化を続けるはずだ。それが習近平政権の言明しているところだ。その間に何とか日米で平和的解決を進める以外に、台湾の民主主義は守れないだろう。
この先、アメリカと中国の緊張関係は高まって行く。ロシアのウクライナへの軍事侵攻が、対立関係を高めた。そして、ロシアは中国への依存を高めた。中国は漁夫の利で、食料もエネルギーも自由主義陣営よりも有利に入手している。
ある意味、中国に在る食料とエネルギーというおおきな難関を、ウクライナ侵攻が、助けることになったのかも知れない。アメリカにしてみても、代理戦争が行われていることは、あながちアメリカの不利益でもない。軍事産業にしてみれば、武器の更新は必要である。
米中の緊張はさらに高まって行くはずだ。その一番の火種が台湾問題になるだろう。日本がやるべきことは、台湾問題を解決する外交的努力だ。先ずは日米台の3カ国会議をやる。その話し合いの結果、台湾の在り方を世界に示してゆく。そのことが世界に台湾の窮状を認識させることになるはずだ。