日米直接首脳会談はどうなったのか。

   

 今回の日米首脳会談はコロナ緊急事態下である。菅政権はどうしても一番先にアメリカを朝貢したかった。オリンピック開催と対中国政策において、アメリカの力を借りる以外に道が見つからないからである。アベ政権の外交政策の空白の結果である。
 アベ政権はずいぶん海外に訪問はしたが、具体的な成果はなかった。それはアベ政権の方向が間違っていたからである。領土問題は重視していたかのように振舞ってはいたが、成果どころか緊張を高め解決は遠のくばかりであった。
 懸案の北朝鮮問題でも、拉致された日本人の救出をアベ政権の最大課題だと口にはしていたが、結局わずかも成果が出なかった。つまり8年間がまた無駄に過ぎ、それだけ風化が進んでしまった。アベ政権は看板は掲げるが、具体的には少しの結果も残せなかった。
 その原因は日本の国際的な立ち位置のアベ政権下の後退である。あらゆる分野で日本が劣化を進めた8年間である。経済政策の間違った結果である。予想した通りの過去最悪のアベ政権である。その官房長官である菅氏が、政権を引き継いだのである。期待はできない。
 政策の間違いは新自由主義経済という、能力競争にある。これが日本人のちからをそいでしまった。力を合わせて一人では出ない力を生み出してきた。日本的共同が失われた。
   農業分野においては、国際競争力のある農産物に力を入れる。一例がリンゴなどの果物である。確かにこうした輸出競争力のある品目は伸びた。ところがその背景にある、大多数の農産物は衰退をした。
 国際競争力のないものは止めればいいと考えているのだから、当然の結果である。農業の位置づけが間違ってしまった。何といっても地方社会では農業が地域社会を形成する要素になっている。それは経済に占める比率だけでは見えない社会全般にわたるものであった。
 それは江戸時代から続く農本主義ともいえる。自給国家の形から産まれたものだ。その終わりが来ているのが、地方社会であろう。地方を維持してきた人間の意識が政府からないがしろにされている。それは経済優先の競争主義を絶対の正義として押し付けた結果である。
   社会のために見えないところで支えていた力が衰えてしまった。日本的な共同の力が失われた。力があるものが、それにふさわしいだけとるのが当たり前になった。農業は社会の基盤のようなものだ。農業は産業だけでない意味が存在した。
 農業が地方社会からも追いやられたのだ。どれほど立派な農業を経営していたとしても、経済の規模で評価がされないものになった。その結果地方社会の骨格のようなもの、価値観のようなものが変化をきたした。
 そして外から来た資本が地方社会を動かし、地方社会の誇りの様な価値観が失われた。地方社会を衰退させとた。農業までもが外の資本と労働力に依存する結果になった。こうして、農業分野すでに基幹産業ではなくなりつ、地方社会でも存在意義を失いつつある。
 しかし、国家の安全保障と環境の保全には農業は不可欠なものである。その不可欠なものを経済競争力がないから、弱まっても良いというのが、アベ政権の思想であった。ところが骨格を失った国家は、目先の実のない経済に流れてしまい、国家の力を急速に衰えさす結果となった。
 それは半導体分野を見ればよく分かる。日本はこの分野では世界一の時代もあったのだ。ところが今は競争力を失い、外資に依存するような状態である。IT分野では完全な後進国化している。コロナで露呈した日本の社会の能力低下はみじめな状況である。
 ワクチン製造で見るように、日本には開発能力が失われてしまったのだ。実に残念なことに、今すぐお金にならないことに準備するような仕組みがない。10年前の高病原性鳥インフルエンザの流行に際して、ウイルスという物が全く解明できていなかった。
 ところが今度のコロナが起きてみると、諸外国はウイルスに対する研究が10年で様変わりするほど進んでいたのだ。そしてその結果が今回のワクチン開発に生かさせている。日本ではワクチンの開発は2,3年はかかると当初からされていた。未だできていない。まだ1年はかかるのだろう。
 
 力を衰退させつつある日本国である。宗主国アメリカに依存を高める菅氏としては、おっしゃるとおり従います。という以外に隷属国としての対応はないだろう。経済だけにしか意識がない日本政府が、対中国経済のマイナスをどう考えるかだけなのだろう。
 菅氏のアメリカ朝貢はそこそこであったと言われている。すべて言いなりなのだから、そう見えるだけだ。お土産にワクチンの優先購入がいただけた。しかし日米共同のうらになにが隠されているのか、これから見えてくると思われる。
   台湾を日本政府が口に出して、同じ価値観を共有する国家と口に出して言ったこと、あるいは言わされたことはよかった。対中国については曖昧なだけでは駄目だ。日本の方向を示し、その原則に従い関わる。経済優先だけでは日本は行き場を失うことになる。
   結局のところ日本は独立しなければならない。そして、東アジアにある、品格の高い文化国家を目指すことだ。お金はほどほどにして、心豊かに暮らすことを大切にすべきだ。豊かな日本列島はそれができる場所だ。そのよい見本が台湾である。

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