もしトランプ後の米中関係

   



 アメリカではトランプ氏が世論調査では有利と言われている。その背景にあるものはアメリカの分断から崩壊への予兆なのだろう。社会の分断が進み、極端な意見になる人が増える。白人が少数派になること。押し寄せる移民難民の大波。格差と差別社会。そして中国に世界の覇権を奪われること。

 豊かになりすぎたアメリカ人は、首位転落の不安にさいなまれているのだろう。今も経済は好調なのだ。日本のように停滞の中にいるわけではなく、経済成長を続け、豊かすぎるような人達の国ではあるのだ。競争主義の限界をアメリカは迎えている。

 豊かさを分け合うことが出来ないアメリカ。能力があるから豊かなのだ。能力がないものは貧しいことは仕方がない。こんな独りよがりの考え方が、アメリカという、経済的には豊かであるが、心の貧しい人達の国にしたのだ。日本がアメリカに追随する姿が、実に情けない。

 フランスに来ていたアメリカ人留学生は、夏休みのあいだアメリカに戻り、アルバイトをすれば、フランスで一年暮らせると言っていた。多分今でも似たようなことだろう。だから、世界中から人が集まる。その人達がさらに豊かな国にしている。だからこそ問題も大きくなり、解決が付かなくなる。

 そんなアメリカ人が、トランプを選ぼうというのは、金持ちの不安なのだろう。もしかしたらアメリカが中国に凌駕されて、経済的に苦しくなるかも知れないという不安がある。世界1を続けてきた国の転落の不安である。確かに中国にはアメリカを追い越す潜在能力がある。

 それはインドにもあるのだろう。グローバルサウスといまでは言われる第3世界の国々も発展の潜在能力は高いのだろう。それはアメリカがどれほどの大国であるとしても、歴史を見れば当たり前の事で、栄枯盛衰は歴史の常である。栄えた国は必ず滅びている。

 しかも、アメリカの内部は、どの先進国よりも不安定で混乱したものである。未来予測が付かない要素がいくらでもある。アメリカは形の動き続けている国なのだ。だから、発展余力も高いし、移民労働力を上手く活用して、経済発展が出来たのだ。

 その内部的な混沌とした不安要素が、かなり煮詰まってきたのだ。年間200万人もの移民、難民が押し寄せれば、塀を作りたくなる気持ちも分る。米国には移民が4500万人と人口の14%もいる。 無資格の滞在者も1000万人と3%を超え、働き手や消費者として存在感を示す。

 移民がいなければ、アメリカの労働者は3割に激減する。移民に頼らざる得ないが、アメリカ社会全体としては移民の急激な増加に耐えきれなくなっても居る。こうした内部矛盾がトランプ主義を作り出したのだろう。トランプが大統領にならないとしても、分断社会。階級社会。差別社会。はなく成らない。

 この社会内部の対立、亀裂は、今後のアメリカに変化を作り出すはずだ。さらに階級差が広がり、多分耐えきれなくなった下層階級からの暴動が起こるだろう。以前から病理的な銃乱射事件は頻発している危うい社会だ。資本主義経済の能力主義の限界が見えている。

 アメリカはそうした内部問題から、国民の意識を中国に向けようとしている。この目をそらそうという事から、沖縄の基地化が進んだ。米軍基地負担の軽減どころか、沖縄をアメリカの前線基地化しようという計画が、着実に進んでいる。それが岸田氏の国賓待遇の奴隷化である。

 中国の世界進出が問題だから、アメリカが困っているとしているが、中国の一帯一路政策自体は、何の問題も無いはずだ。アメリカの東アジアの前線基地化の方が異常であろう。その異常を受け入れざる得ないところが、日本がいまだ独立国に成りきれない、と言うことだろう。

 中国の経済成長は確かに世界経済を変えようとしているが、むしろアメリカの成長を中国が支えているという側面も大きい。アメリカも、日本も、経済制裁をしながら、中国の経済成長の恩恵を受けようともしているわけだ。中国が日本のように言いなりにならないと言うところが問題なだけだろう。

 経済に於いてはアメリカと中国の関係が一番大きいのだ。だから、アメリカは中国に経済制裁すると言いながら、その膨大な取引は相変わらず減らないのだ。ロシアを経済制裁するとしても、結局中国との取引があるために、ロシア経済は好調を維持している。

 世界経済はアメリカがどれほど、同盟国と協力して中国を叩くとしても、中国はアメリカを経済規模で必ず追い抜くだろう。そうなれば、中国を中心とした経済圏からの圧力で、自由主義経済圏は危うくなるだろう。それは、国家資本主義の方が、競争力が高いと言うことにある。

 ロシアも同じである。あれほど経済制裁を受けても、経済は好調なのだ。その理由はプーチンの独裁を国民が支持しているからだ。ヒットラーとまさに同じ構造なのだ。習近平も同じだ。国民は経済さえ良く成るのであれば、少々の不自由は我慢しようという選択なのだろう。

 アメリカの言うことを聞かないでも大丈夫な国が出現したのだ。それはアメリカが経済成長をどれだけ続けたとしても、ますます、世界の経済情勢は相対的にアメリカの力が低くな
って行く。その状況を受け入れられないアメリカ人の精神構造に何かがあるのだろう。

 日本はそういう世界の競争から、徐々に取り残され始めている。それは日本人の大半が、競争心を失い始めたからだろう。心優しい穏やかな日本人がふえているのだから、悪い事ではない。人を押しのけてまで、自分を押し出さない。その点ではいいわけで、そこに新しい人間の在り方を作り出す必要があるのだろう。

 トランプのように、人を押しのけて自分のゆがみを正義として押し通すような厚かましい人が、出てこないだけ日本は増しである。それぞれが、自分らしい幸せな生き方を捜すことが出来る国になる。それは競争では無く、自己開発である。自分が深まる生き方であろう。

 今行われている。外国人労働者の流入政策は、労働者不足という経済の事情だ。外国人とどう関わるのかが、これからの日本の課題になるはずだ。朝鮮人差別で、日本は問題のある国だ。また、人種差別問題が起きないように、賢明な政策が必要である。
  
 アメリカの分断社会を日本にまで波及させないことだ。日本はアメリカに依存しすぎている。だから、アメリカの顔色を見てしか動けないのだ。日本がどんな国を目指すのか。政治は、本来国の方角を捜すことが役割だろう。農業基本法など、まさに国の方角を示しているものでなければ成らない。これについては改めて書きたい。

 - Peace Cafe