石垣島生活はなかなか良い。
石垣島の暮らしは3年に近づいているが、予想していた以上に快適である。すぐ帰る人が多いと竣工祝いの時に建築してくれた方々に言われたのだが、このまま30年暮らすこと間違いなしである。それまで生きられればの話だが。石垣島ならば、確かに長生きできそうだ。
良い選択が出来たと思っている。暮らしが簡潔になった。モヤモヤしてしまう訳の分からないことが減っている。これが一番である。時におかしい気分が来る体質がある。ちょっと具体的では無いが、絵を描くことに絞り込めたと言うことでいくらかさっぱりした。
10年区切りであちこちで暮らしてきた。その年代ごとに暮らしの場所を選んできたつもりだ。計画していたわけでは無いが、やりたいことをやりきれる場所でやろうとしたら、そういうことになった。石垣島に引っ越したのは、70歳からは絵を描くだけの生活にしたいと考えたことから決めた。
絵を描く為には石垣島が日本で一番望ましい場所だったのだ。その理由は絵が描きたくなる空気が石垣島にある。人の暮らしが自然に現われている。アトリエカーで出かけていって絵を描く。こうした暮らしが無理なく出来る理想的な島である。
車の運転が出来る間のことと考えたこともある。石垣島の慣れた道であれば、まだしばらくは運転が出来る。免許返納を先延ばしにするには、車の少ない、慣れた場所で暮らすことにしなければならない、いまならまだ何とか石垣島になれることが出来ると69歳で石垣島生活を始めた。
小田原でもあちこち絵を描きに行った。車で描きに行くというのは30分ぐらいまでである。小田原から篠窪や箱根や根府川にはよく行ったのだが、毎日気楽に行くにはギリギリの場所である。その他となるとなかなか描きたくなる場所が無かった。
その点石垣島は毎日違うところに出かけたとしても、30分で行ける描きたくなる場所は尽きなくある。美しい島と言うこともあるが、自分を惹きつける耕作地と自然の関係が見えてくる形が良い。アトリエカーで絵を描くなら、石垣島が自分には一番望ましい。
石垣島に通って絵を描いているぐらいなら、住んだ方が良いということになった。移住された他の方に聴いてみると、やはり、4,5年は通っていて、どうしても住みたくなったという人が多い。その理由は様々であるが。
絵を描ければ、それが一番良いという話は、特別な話で、他の人にはあまり参考にならないことだろう。食べ物が美味しい。美味しいレストランが沢山ある。医療は私には十分である。買い物は小田原より便利にそろっている。馬でも、牛でも、水牛でも、ヤギでも、ニワトリでも飼うことが出来る。
難しい方の条件を考えれば、若い人であれば、仕事探しがなかなか厳しいのだろう。生活費は小田原と変わらない。そして賃金は20%ぐらい低いのではないだろうか。しかも、コロナで観光業が厳しいから、簡単にアルバイトも探せない状況になっている。それでも外国人労働者が減った分、人手不足だとは言われている。
新規就農を目指す人にとって、石垣島が向いているかどうかは少し参考になる意見はもっている。石垣島で農業を目指すとすれば、まず3年は石垣の農業を経験し無ければ無理だ。農業はどこでやるにしても難しいのだが、石垣島の農業はあまりにも難しい。
石垣島の専業農家の人はとても工夫をされている。かなり働き者と言える。熱意も高いものがある。それでもそれぞれに苦労されている。お米の収量は日本で低いほうだ。一体何故、「ひとめぼれ」と言う寒冷地要のお米を作っているのだろう。これは愚痴である。
気候が厳しい。亜熱帯の強い陽射しと、それにさらされる土壌がなかなか手強いことになる。病虫害はやはり多い。田んぼは有機農法でやる為にはまだまだ工夫が必要である。現状では「ひとめぼれ」の2期作の栽培は特に難しいと言うことが、分かってへこたれている。
新規就農者の多くは、果樹か、牧場だろう。養鶏とか、野菜とか、お米であれば、石垣島は余り向いているとは言えない。果樹や牧場の場合は土地を探すことが出来るかどうかであろう。来てから何とかなるとは考えない方が良い。空いているように見えても、それぞれに空いている理由がある。
農地を探すことは石垣島は困難である。小田原よりもかなり難しい。賃貸料は小田原と変わらない。その上に農産物の販売については、小田原よりも難しいし、価格は安い。野菜農家はハウス農家と言うことになる。夏は大半の方が野菜栽培はしていないそうだ。
栽培が難しい上に、安い野菜が九州などから入ってくるので、無理に作っても経営的には難しいのだそうだ。そういう意味で、新規就農して、マンゴー、島バナナ、パイナップル、コーヒーこうした果樹栽培を目指す人はいる。
無農薬で栽培している人もいるようだから、可能なのかもしれない。台湾が洋蘭栽培が盛んだ。気候的に温室がいらないのだから、かなり有利である。私はパフィオペタラムの原種が好きなので、いま25種類ぐらい栽培している。
洋蘭については東京や小田原で栽培していたときと比べて、はるかに調子が良い。湿度が高いと言うことなのだと思う。夏の暑さという問題はあるが、石垣の方がましと言うこともある。洋蘭愛好家であれば、石垣に引っ越す事はお勧めである。
鶏を飼うのも石垣は悪くない。街中で飼っている人がいるくらいで、養鶏業に対する嫌悪感は少ない。小田原ではこの点で苦労した。仕事は周囲の人に嫌がられてまで続けることは難しい。趣味の範囲でニワトリを飼うことは出来る島である。
コロナが始まってから、レストランに行くことは全くない。コンサートやライブハウスにもまったく行っていない。石垣島の一番の楽しみを我慢している状態。これはちょっと残念なことである。石垣島は唄の島である。音楽文化はなかなかのものである。
かなりハイレベルな演奏が身近にある。毎晩どこかで生で音楽に接することが出来た。伝統音楽や民俗芸能も見応えがある。それは、三線や八重山民謡だけでない。ジャズやロックやフォークもオリジナルなものですごいと思う。また、一流の方が来島して演奏することも多い。
街角コンサートというものがあって、お寺の境内や市民会館の中庭で毎月演奏も行われていた。3番アコウの木の下で行われる、トウラバーマの会は他では聞けない見事なものである。ともかく音楽好きの人にはたまらない島である。
若い人もけっこう来ている。農業関係の人もかなりいる。石垣島の良い所は、移住者が多いと言うことかもしれない。ヤエヤマ合衆国と言われるくらいで、新しく来る人に抵抗感が少ないところが、石垣島の快適なところかもしれない。