韓国の戒厳令下の6時間
韓国の政治状況には前近代的なところが残っている。韓国は経済では日本より新しい展開が出来ている。希望も大きく見える。文化的には世界に注目され、高く評価されている。ノーベル文学賞を受賞した。伝統的文化に於いても深い独自のものがある。
所が政治の動きを見ると、民主主議が機能しているようには見えない。何故か極端に振れる。デモが起こるのは良いことだと思うが、感情的な動きになりやすい。ユン大統領が何故戒厳令を出したのか、それ以外に道はなかったのか。
ユン大統領は国民の支持を失っていた。国会では野党が圧倒的な過半数を握り、大統領としての機能を発揮できないで居た。大統領府の活動の必要な予算まで否決されている。確かに野党は大統領を辞めさせるために、国会を支配し大統領が何も出来ない状況に成っていたという。
その大きな理由が最大野党の「共に民主党」はイ・ジェミョン(李在明)氏 である。選挙違反で一審判決で有罪となっている。最高裁の判決は6ヶ月後に迫っている。もし、これで有罪が確定すると、公民権が剥奪され、選挙に出ることは出来なくなる。
2022年の大統領選で僅差で敗れた李氏は、収賄や汚職を含む複数の罪で起訴され、少なくとも4件の裁判に直面している。 韓国はいつもそうなのだが、敗者に対し裁判によって徹底して叩く動きがある。また、大統領は辞めればいつも告訴される。
ユン大統領は検察出身の人で、最高裁の判事は人脈が有り、イ・ジェミョン氏が有罪になる確率は高いとされている。6ヶ月の間に何とかユン大統領を罷免させて、自分が大統領になれば、罪を恩赦で消せると画策していると言われている。それが国会を止めて、大統領を止めさせようとする要因のようだ。
本来であれば国民は自己本位のイ・ジェミョン氏を支持しないはずだが、韓国では人気が高く、この機能しない国会を受け入れている。この辺りの実情までは分らないが、ユン大統領が親日的で、イ・ジェミョン氏は極端な反日主義者である。これも支持される一つなのかも知れない。
ユン大統領の焦りが戒厳令にまで突っ走ったわけだが、軍がユン大統領を支持しなかった。これが戒厳令下の6時間の誤算だったのだろう。金龍顕前国防相はユン大統領の盟友で有り、互いに信頼をしていたようだ。戒厳令で軍が動いてくれると判断した理由は、両者の検討の結果軍が動くと判断したのだろう。国防相は拘置所内で自殺をこころみた。
軍が動かなかった理由は分らないが、韓国社会がある程度成熟してきていると言うことかもしれない。軍には軍の独自の判断力があり、大統領や国防相の命令に従わなかったと言うことになる。韓国の政党間の対立で軍が引っ張り出されるのではさすがにおかしい。よくぞ命令を拒否した。
軍が冷静に判断できたために、流血事件にならないで済んだのだ。実際の所、大統領命令に対して、抵抗する命令違反なのだから、その判断にはきわどいところがあったはずだ。もし軍が戒厳令に従い出動すれば、野党の呼びかけで国会前広場に集まった野党支持勢力が、大惨事になりかねなかったことは事実だ。
1980年に起きた光州事件では、抗議活動をする人達が、軍によって多数殺された。1979年10月26日の朴正煕大統領射殺事件で軍事独裁政権に動揺が走ったことをきっかけに、ソウルを中心に民主化運動「ソウルの春」が一気に動き出した。
翌1980年5月16日にはソウルで学生・市民のデモは5万人にふくれあがった。光州でも市民・学生が一体となった集会が開催された。翌5月17日、それらの動きを封じるように、全斗煥らの一部軍人がクーデタを決行、全権を掌握したとして、戒厳令を全土に発布した。これが前回の44年前の戒厳令だ。
民主化運動を金大中らの煽動による暴動であるとして逮捕し、全面的弾圧を開始した。 金大中はその後日本から拉致されて、日本海で殺されそうになったが、その後大統領になった。韓国の動きを見ると、誰が保守派で誰が改革派なのかどうも見えない。
光州事件での犠牲者(死者)は民間人で168人、軍人23人、警察4人、負傷者は4782人、行方不明406人に達する。 とされている。この時が韓国最後の戒厳令だったはずだが、44年ぶりにそれを再現するような事件を大統領自身が起そうとしたのだ。
惨事が起こらないで良かったのだが、極めて危うい状況だったといえる。やはり軍事政権が終わり、韓国が民主主議政治に変ったと言うことが、軍が武力を使わなかった、要因だったのだろう。としても、韓国の政治状況が他の分野に比べて随分遅れているというように見える。
そもそも軍を自国民に向けて動かすようなことは、大統領といえども出来ない仕組みにしておかなければならない。閣議決定が不十分だった。閣僚が揃わないまま強行したとされている。それにしても韓国の閣僚の役割と大統領の権限はどうなっているのか、疑問がある。
日本は大丈夫なのかと思う。国会は野党が多数派である。国民民主党と維新の党が補正予算案に賛成して、一応は通過した。手取り増と交換条件だった。やはり政治
は妥協である。悪いものと、もっと悪いものを較べなければならない。問題があっても第3の道を模索するのが民主主議政治だろう。
は妥協である。悪いものと、もっと悪いものを較べなければならない。問題があっても第3の道を模索するのが民主主議政治だろう。
その点石破氏はよく勉強していて、国会答弁で自分の言葉で答えている。この点は評価できる。特に企業献金の禁止について、多数派の野党から、禁止の強い意見が繰り返されているが、石破氏はきちっと論理的に答えている。私も企業献金の禁止はおかしいと思っている。
ウエッブ政策表示を選挙にとり入れればビラ印刷に何千万もかかるなどと言うことはなくなる。どぶ板選挙などもう終わる時代だ。むしろ自民党がお金がかかるというのは、こういう地回りお金がかかっているのだ。そういう地縁血縁を中心の政治は終わりにすべきだ。
2024年度補正予算案が12日、衆院本会議で自民党、公明党、国民民主党に日本維新の会を加えた4党などの賛成多数で可決され、衆院を通過した 。おかしいとは思うが、政治は妥協である。戒厳令などやられたらかなわない。自民党内では譲りすぎだという反発が起きているそうだ。
これは新しい日本の政治のやり方の模索である。これがまともであれば、参議院選挙で自民党は評価されるだろう。世界の民主政治が代わり始めている。インターネット革命の最中だからだ。今までのやり方に固執せず、新しい妥協の仕方を見付けなければ成らない。
韓国の戒厳令から始まった政治空白がどういうことになるのか、北朝鮮はウクライナ出兵で韓国攻撃どころではないか。韓国経済は影響を受けないのか、韓国の混乱から日本も学ばなければならない。日本は民衆の政治への参加意識ははるかに低い。