福島汚染水海洋放出

   



 福島原発事故から11年5ヶ月を経過して、政府が漁業者との約束を破り、汚染水を海洋放出することになった。いつかどこかに捨てなければならないことは最初から分かっていたことだ。東電は絶対に汚染物質を海洋投棄はしないと、約束をしていたのだ。そんなことはそもそも無理な話に決まっている。

 凍土壁で水の流入が防げるとしてすごいお金をかけて、失敗したのだ。凍土壁ではなく、取り囲むコンクリート地下ダムを造るほか無かったのだ。そう主張する人は多かったのだが、凍土壁で完全だと、ここでも東電はウソをついた。それがまるで失敗だったことはすぐにばれた。それで地下水が原発に流入し、水が溜まり続けたのだ。

 政府も東電も原発に関しては、出来ないウソを散々言ってきた。安全神話がそもそもウソだったのだ。事故後の放射能汚染は小田原にもおよび、お米も食べてはならないと言うレベルに達した物もあった。汚染された食料を関東、東北の人間は随分食べたが、寿命に現われるような疫学的な顕著な結果は、今のところ出ていない。放射能については未解明なことが多い。

 原発放射能汚染廃棄物は、処理することは出来ない。ただ永遠に地下深くにでも保存しておく以外に方法がない。そんなとんでもない汚染物質が出来てしまう機会を使うこと自体がおかしいだろう。原発を世界中で使っているが、すべての原発が廃棄物処理については行き詰まっているのだ。そういう物を利用して便利な今の生活が成り立っている。

 中国外交部の毛寧報道官は、日本の放射能汚染水海洋放出について「もし安全なら海洋放出の必要はなく、安全でないならなおさら放出すべきでない」と述べ、「日本はいかに過ちをごまかそうと、放出計画を正当化することはできない」と強調した。
  
   原発事故汚染水の海洋放出は世界に先例がなく、共通の基準もない。これは科学の問題であり、態度の問題でもある。中国は日本に対し、国際社会と国民の合理的な懸念を直視し、海洋放出計画の強行をやめ、誠実な態度で周辺隣国と十分に意思疎通し、責任ある方法で放射能汚染水を適切に処理し、国際的な監督を受けるよう促す。

 この発言に対して「正論である」と言う意見が原発反対派からすごい数上がっている。私も原発反対派の一人であるが、がっかりである。正論にはまったく見えない。目くそ鼻くその類いだ。原発を止めるためにはどうすれば良いかを考えることだけが、正論である。原発事故の汚染水と原発冷却の汚染水のトリチウムは違うものではない。毛報道官自身が科学的に考える必要がある。

 原発を保有して、地上核実験を繰り返してきた中国がそもそも言えるようなことではない。その放射能汚染は黄砂となって、日本にも降り積もっているのだ。小田原で放射能汚染調査を続けたときに、どうもその年代の物と思われる汚染の方が福島のものより強かったことが分かった。

 アメリカの核実験の放射能、中国の核実験の放射能。散々浴びてきたのだ。その時の放射能は、我々の世代は十分取り込んでいる。それでも日本人の長寿は継続中である。放射能は微量な場合、同人体に影響するのかは、まだサンプルが少ないのだろうか。

 放射能汚染物質の処理の方法を中国が研究して、結果を出しているならともかく、何も対策もしないで垂れ流している中国なのだ。まず自らが原発汚染水のトリチウムの排出を正すことの方が先だ。原発実験での放射能拡大の謝罪模する必要があるだろう。確かにメルトダウンした原発から出ている、事故汚染水を貯め続けた国は日本以外にはない。今までの事故ではアルプスも使わず、そのまま流し続けたのだ。原発の稼働汚染水とは違うが、トリチウムに変わりは無い。

 どこの国のどの原発からもトリチウム汚染水は出続けているのだ。そして海に流しているのだ。トリチウムは自然界にもある危険かもしれない放射性物質である。雨にも含まれていて、降雨中のトリチウムの量は原発から出る物より多いと書かれているものもある。

 日本全国の原子力発電所から海に放出されているトリチウムは、合計で年に約380兆ベクレル。福島に溜まったトリチウムは780兆ベクレル 。だからたいしたことが無いというのが、東電の説明である。こんな説明をしているから、それなら、福島の汚染水は安全なら水道水にしろとか。国会で配れとか言うことになる。

 すべてウソだと思っている。安全なはずもないし、飲めるような物ではない。いつか遺伝子を傷付ける蓄積になるかも知れない。それはマイクロプラステックとおなじだ。手に負えない処理困難物を人間は作り続けている。このままでは人間は自分で作った汚染物質で、滅ぶことになる。

 プラステックも禁止すべきだし、禁止できるまでは燃やしたってかまわない。処理が面倒くさいから、その辺に捨てられてしまうのだ。燃やしても仕方がないとなれば、マイクロプラステックはいくらかは減る。そして原子力は一切禁止である。

 それが出来
ないから、人間は妥協している。中国の報道官が主張した主張は屁理屈に過ぎない。正論などとは到底言えない。中国も原爆も、原発も止めた方が良い。それが正論である。中国があえて嫌がらせのように主張して、日本の食品を全面禁輸するのは、米中経済戦争が起きているからだ。

 日本はアメリカ側の一の子分なのだ。相手の商売が上手くゆかなければ、自分が得をするのだ。それが資本主義の能力競争である。商売のために汚染水も利用している。中国は日本からの水産物すべての輸入禁止をした。まさに非科学的公道である。しかし、中国国民は旨くやったと思っていることだろう。

 国家資本主義の方が決断が早くて、競争に有利なのだ。民主主義が危うくなってきている。国民の合意を待てなくなっている。だから漁業者の賛成がなくても海洋投棄することになる。中国が原発も原子爆弾も止めないのは、国民の安全よりも、経済競争の勝利が優先されているからだ。

 毛報道官にその自覚はあるとは思えない。在るとすれば、共産党へのあるいは習近平氏への信仰心だろう。中国のトリチウムならば、この人は飲めるだろう。信仰心から平然とウソをつくために、聞いた人が正論だと思い込まされるのかも知れない。

 日本の反原発の人達の知性の劣化には驚く。たんなる感情論だけでは原発はなくならない。毛報道官を正論だと持ち上げるようなことは、中国の原発を認めることになるのだ。原爆保有まで認めることになるのだ。毛報道官の発言を評価するのは大間違いだ。

 トリチウムだけではない。放射能で汚染された表土はどうなったか。相変わらずビニールシートで包まれているだけだ。これも薄めてばらまくのか。放射能で汚染されたお茶を、お茶畑の隅に置いておいた。その当たりを後から、測定してみた。まったく周囲と変わらない状態で、特別に高濃度と地点は見つからなかった。野外に置かれていれば場所によっては、いつの間にか地中に流れて行くようだ。

 結局の所、人間が作り出した放射能の汚染物質はすべて海に流れ込んでいるのだ。マイクロプラステックとおなじだ事だ。人間はかなり危ういところまで来ていると考えるべきだ。暮らし方を変えられないければならない。このままでは、人間は滅亡がそう遠くはない。

 - Peace Cafe