石垣島田んぼ勉強会

   


 田んぼの一段上に自然に出来た牧草地がある。昔は五反ほどの田んぼだった場所だ。そこは今は水が来ないようになっている。その自然に出来た牧草地に、水牛を繋がせて貰っている。水牛も3ヶ月近くなり、随分慣れた。当分の間管理を続けることになった。

 今年の5月9日にアンパルの自然を守る会で、有機農業のイネ作りの見学会を行った。その機会にあしがら農の会のイネ作りの話をさせて頂いた。この集まりをきっかけにして、名蔵シーラ原で田んぼ勉強会が始まった。

いままでの流れを整理すると。
7月4日  苗床の種まき。
7月11日~ 水牛による田んぼの代掻き。
8月1日  田植え。 
9月初旬に走り穂、10葉期での出穂になり驚き。
9月12日出穂
9月22日穂揃い。まだ分ゲツからの出穂が続いている。

 いままでに田んぼの作業には40名くらいの方が、参加された。そのうち20名くらいが中心となっている参加者かとおもう。

 田んぼを始めて見て、分かってきたことがいくつかある。まだ分からないことも色々あるが、ともかく石垣島のイネ作りはなかなか手強い。特に2期作を有機農業で行うことは難しいのかもしれない。

1,石垣のイネ作り農業は10ヘクタールほどの規模の農業法人や大規模な農家が中心に行われている。どの方もさらに広げる意欲を持たれている。平均の耕作面積は5,6ヘクタール。

2,遊休農地に見える場所はかなりあるが、簡単には借りられない複雑な条件の場所のため耕作されていないところがほとんどである。リゾート開発によって、農地まで先行投資の対象になったようだ。

3,石垣の亜熱帯性の気候は、予測されたとおり病虫害が多い。ジャンボタニシ、ニカメイチュウ、ウンカ、イモチ、カメムシ。風通しが悪くなると発生する。また、バンカープランツを周辺にどう作れば良いか検討が必要。

4,海沿いの田んぼは風が日常的に強いために台風が来ないとしても、風対策が必要になる。風速30メートル程度で、葉先が黄色くなった。風で倒されることがあるので、二本植えにする必要がある。これはジャンボタニシ対策でもある。

5,田んぼにジャンボタニシがいれば雑草は食べてしまう。うまくコントロールできれば除草に利用できる。田んぼの畦際に溝をぐるっと回す。田植えが終わったらば、淺水を二週間は続ける。溝だけが水が深く溜まる場所にする。その溝の中にジャンボタニシを採取する罠を設置する。

6,品種を適性で選択すれば、有機農業の畝取りの可能性は見えてきた。晩生の品種を何種類か実験栽培する必要がある。

7,苗作りは1月播種で徒長しない苗を作る必要がある。7月播種では苗が軟弱になる。この場合、1メートルに100グラム蒔きよりもさらに薄くする必要がある。出来れば苗床は本田では無い場所にしたい。水管理と、水牛代掻きがうまく回らなくなる。30メートルの苗床が必要になる。今回は20メートル。二キロ播種。

8,シーラ原田んぼは海沿いにあるが、斜面の一段上にはパイナップルとサトウキビの畑がある。さらにその上には放牧地があり、数百頭の牛が飼われている。そこから出る赤土の水や汚染水が、うまく田んぼで溜められている。

 名蔵湾に直接は出ない形になっている。赤土や糞尿の汚染水がうまく田んぼで沈殿されている形になっていると思われる。シーラ原のような農地の配置を、石垣全体で考えてゆくと珊瑚礁が守られるのでは無いだろうか。

9,石垣市の田んぼは耕地の整備が進んだこともあり、冬期湛水することによって、良いイネ作りが出来ると多くの農家の方が言われている。この有利点を生かして、通年田んぼに水を溜める環境保全型農業が可能ではないかと思われる。

10,田んぼの畦はまず崩れることが無い。一度土を寄せて15センチの水が溜められるようにした。15センチの水管理を続けている。畦は強く、ほとんど管理すること無く、そのままの状態が維持されている。これならばさらに深い水管理も可能である。

11,9月19日田んぼの山側にはネットを張った。1,8メートルの高さ。電柵も一応張ったが、今のところはイノシシは来ていないので、通電はしていない。タカ凧も3つ飛ばした。孔雀よけである。来ていた孔雀も今のところ来なくなった。

 現状では水を必要以上に流している農家が多く、慢性的な水不足になっている。澤からの水が減少していると言うこともあるようだ。水にメーターを付けて、無駄に水を流さないように制限することになりそうだ。

 イネ作りは同じ場所で何千年と循環して農業の出来る作物である。環境を育む農業が水田稲作である。貯水能力。地下水の涵養。生物多様性の確保。大規模農家での、有機農業技術も確立してきている。

 アンパルの自然環境を守るためには、水田を継続することが今後一層重要になるのでは無いだろうか。現在の
稲作農家は平均年齢が高い。このまま対策を打たないと、五年後には担い手不足が起こる可能性が高い。対策を今考える必要がある。

 9月24日から小田原の稲刈りに行く。10月4日に戻る。田んぼはこのままの管理で問題ないだろう。戻っていつ水を切るか決めたいが、できる限り先に延ばしたい。


 - 「ちいさな田んぼのイネづくり」