中国がTPP加盟に正式申請

   




 中国がTPP加盟に正式申請を行った。日本はこの申請を協力して成立させなければならない。アジア経済の新しい方向が生まれる絶好の機会かもしれない。日中の緊張が解ける機会になる可能性もある。あらゆる機会を利用して、平和な関係を模索することが日本のやるべき事だ。

 TPPには現在11カ国が加盟している。幸いなことにアメリカが脱退して、バイデン政権も加盟を渋っている。日本はアメリカがTPPを推進していたので、やむを得ず引き釣り込まれたようなものだった。そのアメリカが出来上がってみると、有利さが足りないと言うことで抜けたのだ。

 これでTPPの本質が少し変わった。もし中国が加盟するとなれば、中国が国際ルールに乗ることになる。そのうえに、TPP自体の性格も変わってくる。日本はこの機会に議長国として、対応をしなければならない。ところが日本政府はこれを中国の嫌がらせのように、麻生氏と西川氏が発言をした。何という外交感覚の乏しい人達か。偉そうな分析など今はしているときでは無い。

 TPPの日本の加盟は大きな問題があった。この時には国会デモまで何回も通ったほど、反対であった。日本の農業がアメリカの農産物に押しつぶされると考えたからだ。農産物は、特に主食作物はその国の安全保障上極めて重要なものだから、貿易品とは別枠に考える必要があるという当たり前の考え方だ。

 アベスカ政権は農産物も国際競争力のあるものを作ればそれで良いという考えである。農産物が自然条件に影響されると言うことを理解していない。リンゴが輸出できれば、お米は我慢すれば良いという考えである。主食作物とその他の農産物を同じに考えては成らない。

 コロナで身に染みたように、独立した国家は生活の基本である食料は自分の国で自給できる態勢が必要なのだ。お米の生産価格は国土の条件で変わってくる。一律に生産性を議論することには無理がある。水田の環境調整能力など、総合的にその必要性を考えなければならない。

 日本の新自由主義経済は、国家の安全保障をまったく軽視した危ういものなのだ。食料など余ったところから安く買いたたけば一番特だという、先の見通せない場当たり主義そのものだ。アメリカが売ってくれなければ、中国がある。オーストラリアがある。それがいつまででも続くと馬鹿げた空想をしている。

 世界は食糧不足に必ず成る。誰にでも簡単に分かることだろう。世界人口が増え続けている。地球環境を破壊しての農地の拡大はすでに限界に達している。中国が食糧輸入国になったように、肉の消費が増えればたちまちに食料は底をつく。

 食料生産に一番必要なものは熟練した労働力である。その労働力がこの先不足してくるのが日本社会である。一度農業から離れてしまえば、そう簡単に農業労働者に成ることは出来ない。農家に育った人材であれば、まだある程度は対応できるだろう。そうした農家出身者じたいが居なくなっているのだ。

 植物という生き物を相手にした仕事は、年季と感が必要である。農業者は熟練した職人のようなものだ。そんなことはいらないというのがスマート農業なのだろうが、お米はそんなわけには行かないのだ。お米の生産時間をいまより10%短縮する。などと言うことは不可能なものだ。年に1回しか田んぼは利用できないのだ。

 もちろん素人でも出来ないわけでは無い。しかし素人がやるとすれば、慣れた農家の方に比べて数倍の労働時間が必要になる。しかも、完全に失敗する可能性もかなり高いものになる。5年間ぐらいは修行をしなければ、農業生産者としての役には立たないのだろう。

 日本はここ10年食糧自給率37%と言う国である。農業従事者の平均年齢は70歳という状態。このまま平均寿命まで行くのも遠くないように見える。当たり前のことだ。生活を出来なく国がしているのだ。誰が生活が出来ない仕事を子供にやらせようと思うわけがない。

 2018年→2020年の農林水産物の主な輸入相手国は、1位が米国18,077憶円(18.7%→21.9%)、2位中国12,477憶円(12.9%→10.6%)、3位カナダ5,875憶円(6.1%→6.6%)とアメリカ中心により進んでいる。

 日本国内での食料生産量と同じ位をアメリカに依存していると考えてもいいのではないかと思う。国の軍事的な安全保障はアメリカに依存している。その上に、国の食料的な安全保障もアメリカに依存しているという現実がある。

 このアメリカ依存の状況を変えて行く必要がある。アメリカは一国主義に変わりつつある。世界から徐々に手を引いている。遠からず、日本との距離も広げて行くと考えておかなければならない。それは日本の方針にかかわらず起こることである。

 アメリカ占領から始まった日本の敗戦からの70年は、アメリカ依存の70年であった。アメリカは自分の都合で日本に基地を作ってきた。それが日本の防衛の肩代わりでもあったのだろう。しかし、アメリカもこのところ変わり始めている。世界情勢も変化を始めている。
 
 日本は東アジアの中堅の一国としての立場を確立しなければならない。その意味ではTPPへの中国の加盟申請はとても良
い機会だ。中国が国際貿易のルールを受け入れることが出来るかどうかである。その覚悟が一定あるからこそ申請をしたはずである。日本はその仲立ちの役目を模索すべきだ。

 TPPには日本、シンガポール、ベトナム、ブルネイ、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ この11カ国が加盟している。英国と中国が現在加盟申請をしているところである。

 中国との当たり前の経済関係が構築できれば、日本の沈んで行く経済にも浮上の可能性が出てくるだろう。貿易の自由化と言うことは必要なことではあるが、主食食料の各国での生産を互いに保障することは国というものの存在意義に繋がってくる。

 将来全体での国家統一を目的とする、EUのような考え方であれば、食料も域内全体で考えることになるのだろうが、あくまで貿易協定の範囲であるのだから、各国の主食作物の食糧自給の権利は保障される必要がある。

 中国は正式申請する前提として、非公式に加盟国と個別交渉をすでにしたとしている。その上で正式申請をするのだから、中国の国有企業に対する優遇とか、問題になる所は充分に認識している。大いに加盟に可能性が出てきている。

 - Peace Cafe