アフガニスタンはタリバンが制圧した。

   



 アフガニスタンはアメリカが撤退すると同時に、ダニ大統領が政権を放棄し国外脱出した。その後、タリバンがたちまちに首都カブールまで制圧してしまった。あまりのあっけなさに驚きである。政府というものはこんなあっさりと国民を捨てる程度のものなのか、まざまざと見せられた。

 ミャンマーの軍事クーデターに続き、たちまちに国家が転覆する姿を連続して見ることになった。こうした国で暮らしている国民は不幸なことだろう。だから日本がましだとは思わないが。世界が大分怪しくなっている。

 タリバン政権は民主主義をはっきりと否定している。どういうものか知らないが、イスラム法で国を統治すると言うことらしい。宗教統治と言うことなのだろうか。アルカイダとはどう違うのだろうか。アフガニスタン国内の民族対立はどう考えるのだろうか。

 現代の世界情勢の不安定化を痛感せざる得ない。アメリカはテロとの戦いに、また敗れたと言うことになるのだろう。その敗北の理由は、自由と正義と民主主義を守るという建て前が、余りに本音が違うからである。アメリカの利益のために戦っていると言うべきなのだ。建前で戦争など出来ない。

 武力を持ってテロを無くすことは出来ない。武力が武力を呼ぶ悪循環である。メンツとか、意地とか、こういうことで軍事的行動を取ることが一番愚かと言うことだろう。戦争が問題なのは人が死ぬからだけでは無い。何も解決が出来ない方法だからだ。

 米英の有志連合軍は2003年3月、世界の反対のなか強引にイラクに攻め込みイラクのフセイン政権を2ヶ月で崩壊させた。しかしその後米英軍の占領政策のまずさや、イラク新政府の失政と暴虐が重なり、民族や宗派の対立を引き起こし、戦闘状態はその後も続くことになった。

 米国のイラク侵攻は国連安保理により義務付けられた大量破壊兵器の破棄違反を理由とした侵攻のはずだったが、戦後の丹念な捜索でも大量破壊兵器は見いだせず、アメリカのねつ造情報だった事が分かった。一体それに加担してしまった日本はどういう頼りない国なのだろう。


 そのころ、イラクの人が3人日本に来て、確かに京橋の方で講演会をされた。当時日本の自衛隊もイラクに派兵をしていた。イラク派兵反対の集会だったと思う。回りを警察関係者が取り囲み、集会に来る人の写真を写していた。そこで、写真を撮っている警察関係者の写真を撮らして貰ったことを覚えている。

 公演後、フセイン政権の問題点もよく分かった。そしてさらにアメリカがより問題と言うことも分かった。それでアメリカに出ていって欲しいとして、いなくなったあとどうなるのかと質問した。その時の回答が、「悪いものと、さらに悪いものは比べようも無い」と言うことだった。つまりイラクの人には国作りの展望が無かった。

 当時イラクでは、議会制民主主義が採り入れられ、民主的な選挙により首相が選ばれることになり、イスラム教シーア派の政党が圧勝した。この選挙で選ばれた民主的なはずの政権が、敵対する宗派や旧体制の人達を徹底して迫害した。

 アメリカが軍事介入する状況下で、民主的な選挙を行ったはずのイラクで、ISのような過激派組織が生まれてきた。 結局の所、アメリカはイラク派兵によって、イスラムテロ組織を生んだ結果だけになる。独裁がテロを抑えて、民主主義がテロを生み出す結果に繋がるのか。

 アメリカは正義と民主主義を守ると言う建前で、世界で戦争を続けてきた。日本も属国としてその戦争に加担をしてきた。しかし、何一つ解決できたわけでは無い。むしろ、この軍事的圧力がテロ組織を産み、世界はより不安定化を続けている。

 世界平和のためには武力では何も解決できないと言うことだけは明らかである。アフガンと言えば、私にはペシャワールの会である。つい先日ペシャワールの会の会報が送られてきた。今回のような政治の問題は少しも触れられていなかった。ここまで根付いてきた灌漑用水の事業が頓挫するようなことが無ければ良いのだが。

 今のペシャワールの会は現地の人達が、灌漑用水を作るための活動を支援をする組織である。タリバン政権になり、ペシャワールの会の活動はどうなるのだろう。影響が無いはずがない。不安なばかりであるが、何とか灌漑用水工事の継続できればと思う。

 地道に生活が出来る地域を作る。貧困が武力主義を産む一番の原因だ。生活を破壊したのは、干ばつである。干ばつに生活が破壊され、テロ組織が支配を広げた。食料援助よりも、自立する道の協力をすること。これ以外に出来ることは無い。

 タリバン政権とアルカイダのようなジハード組織はどう関係するのだろう。一応の公式見解ではタリバン政権はアルカイダを認めていない。しかし、アルカイダ組織の残党はアフガニスタンに現存する。この組織が勢力を増してくる可能性はある。

 日本に出来ることは平和外交だけである。イラク派兵が無意味以上にひどい結果をもたらしたように、武力による解決は何も無いと言うことになる。そして、どこの国も外国の武力的圧力では無く、自らが国作りをしなければならないと言うことなのだろう。

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リバン政権がどういう政権であろうとも日本に出来ることは、ペャワールの会のような住民の生活を、住民自身が立ち上げるための支援だけだ。自らが立ち上がるための支援以外、回りのものに出来ることは無い。そうした地道な努力以外に平和な国作りは出来ない。

 フセイン、カダフィと独裁者に問題があるとして、武力で抹殺された結果さらに悪い状況が生まれている。ミャンマーも軍事クーデターが悪い事は当たり前のことだが、ミャンマーを民主的な国家にすることが出来るのはミャンマーの人達だけだ。

 日本はミャンマーとの外交関係は歴史が深い。ミャンマーは歴史的にも民族的にも、複雑に入り組んでいる。国連はスーチー氏のロヒンギャ迫害加担を非難した。ミャンマー軍事政権は、スーチー氏を囲いの中で泳がせていただけなのだろう。抜け出そうとすれば、いつでもクーデターをする気でいたのだろう。

 それに対して世界の民主主義勢力はスーチー氏に手を貸すことは出来なかったのだろうか。どうすれば民主主義が根付く事ができるのか。アメリカですら、大統領が選挙に敗れれば、不正選挙だと叫んで、デモを先導する国である。とうてい民主主義が根付いているとは言えない。

 どれほどアメリカが正義を主張しても、結局の所中国の主張するように、内政不干渉以外にない。中国は言葉通り内政不干渉であれば良いのだが、中国方式の干渉をしているわけだ。その目的は結局の所経済競争である。資本主義の競争主義が世界の限界まで来たのだろう。
 

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