JTB沖縄による石垣島のポンツーン(浮島)設置計画

   



 JTB沖縄による石垣島のポンツーン(浮島)設置計画がでている。とうてい賛成する気にはなれない。どうしてこうも発想が箱物発想で古くさいのだろうか。あの美しい珊瑚礁に、人工物を作ることが観光にとってマイナスになる側面も検討する必要がある。

 ポンツーンと言う言葉は始めて聞いた。 崎枝半島の突端当たりの大崎海域での計画。海岸か ら約330m沖合に縦27m ×横50mの巨大ポンツーン を設置し、これを拠点に シュノーケリングやダイビング、海中展望室、グラスボトムボート、飲食などのサービスを提供する施設ということらしい。

 ポンツーン本体を中心に半径500mの範囲内でアクティビティを実施する。更衣室 やシャワー室、ロッカーなども完備する。収容人数は 300人規模。中くらいの船くらいの、「沖合の浮桟橋」というイメージか。世界一美しい海に観光施設を作れば、観光施設として事業になるという考えだろう。

 観光というとたちまち箱物作りになる。その結果、自然破壊と結びついてしまう。出来た観光施設で、失われた自然景観を考える必要がある。石垣島の自然を守ることが一番の観光資源であることに気付かなければならない。ただの自然ではお金にならないと言う企業論理が間違っている。

 石垣島の未来の姿を島民が充分に語り合わなければならない。今出てくるアイデアはすべてが、既得権を主張する土建的発想である。仕事を持ってくる為に、開発事業が次々に打ち出されている。もちろんそれらのすべてがダメと言うことでは無いが、あの美しい珊瑚礁に施設を作る感覚はどうかしている。

 企業の利益が優先されるから、出来た後のことよりも作るという事業に重きが置かれるということもある。作られないことで生まれてくる価値には目が向けられることは無い。お隣の西表島が世界遺産になった。それは島のかなりの部分の開発が制限されてきたからだ。国有地が多く、又国立公園の指定がされている。

 西表島でも「人間とヤマネコのどちらが大事なんだ」こういう問題提起がかつてあった。そして、どちらも大切と言うことで今に至っている。しかし、ヤマネコが見つかって以降の西表島の経過をみると、箱物の建設はいくつかに止まった。

 西表島では様々な要因が重なり、建設したいという要望と、建設しても経済性が無いという現実が、せめぎ合いながらかろうじて開発が抑制されたためだろう。その結果が世界遺産の島になったのである。世界遺産の島になったら成ったで、やはり「世界遺産と人間の暮らしはどちらが大切なのか」という問題が浮上する。

 どちらも共存しない限り、未来は無いと言うことだろう。経済の重要性は間違いが無い。しかし、この自然という資源を十二分に議論して、住民の共通の意識にならない限り、結局は世界遺産を契機に、島の観光開発というようなことになり、世界遺産の価値も失われ、その結果西表島の住民の暮らしも衰退する。

 石垣島の100年後の未来を考えるべきだ。どうすれば、石垣島の住民が豊かに暮らせるのか。これを住民の立ち位置から、本音で議論すべきだ。大きくいえば観光業が方向にあると言うことは、共通認識では無いだろうか。農業者の立場から考えても、石垣島の農業は観光業と接点を見付けない限り100年後成り立たない。

 石垣牛やマンゴーやパインの熱帯果樹はその好例である。しかし、そうした農業が石垣島の自然を破壊してしまえば、元も子もなくなる。その意味で、100年後のサトウキビには検討の要素がある。補助金が投入されなければ、なり立たないサトウキビである。サトウキビ畑からの赤土流出は危機的な問題である。はたして将来性はあるのかどうか。

 もし、観光のための施設が、観光の魅力を失わせるものであれば、取り返しのつかないことになる。浮島を作るとすれば、その設置場所は今までの観光業に影響を与えない場所であることは前提条件であろう。カピラ湾の出入り口のような場所では、問題外の場所である。

 石垣島の美しい自然が人工物で影響されてしまうとすれば、取り返しがつかないことになる。このあたりは希少な魚が生息すると、崎枝の漁師さんから聞いたことがある。漁師さんは保護しながら、漁をしていると言われていた。

 浮桟橋そのものが悪いわけでも無い。それはゴルフ場が悪いわけでもないが、場所がさすがに悪いというのと同じで、浮桟橋を作る場所が余りに悪い。むしろもっと沖合の西表との間位に作ればまだいいだろう。岸から見たとしても、さして気にならない距離である。

 沖合でも浅瀬はいくらでもある。昔は竹富島から西表島には棹を差して船で渡ったという。むしろ岸から離れた浮島の方が、別天地感が強くて、観光客には受けるのではないだろうか。やり方次第では新しい観光資源になる。

 石垣島の新規事業はいかにも進め方が悪い。すべてを決めてから、頭ごなしに有無を言わせず進めようという態度である。石垣島という自然環境は人類共通の価値だと考えるべきだ。この自然環境を共生しながらうまく利用して行くことが、石垣島の永続性ある繁栄に繋がる。

 水牛による伝統農業をどうやって、稲作農業の価値につなげるか。このことを考えている。できる限り水田を残すことは、環境保全になる。石垣島では通年通水による有機農業が可能な場所である。まず私はその技術的確立を目指したい。

 そして、水牛による稲作体系を構築し、観光と結びつけて行く。名蔵アンパルやアンパルの田んぼの間を水牛車で回る。水牛の代掻きを体験する。そして、体験したお米をお土産品として提供する。水牛米をどこのホテルでも使って貰うように進める。もう少し検討をしなければならないことだ。

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