領土問題の解決方法

   



 領土問題を考えるときに、歴史的事実として日本領土である。というような考え方は全く無意味である。竹島が歴史的にいかに日本領土であったとしても、すでに韓国が実効支配をしている。そもそも歴史という物は長い時間の連続である。いつのことを言うのであろうか。

 領土問題を考えるときにとつぜん日本人が愛国者に変わる。オリンピックで日本選手を応援するときのようなきぶんになり、領土は我が物だと主張を始める。竹島が日本であったとしても、どれほどのことでもないと考えている。

 何故、領土がそれほど重要と思い込まされているのだろう。自分の暮らしと直接関わる人など先ずはいない。良く漁業権があり漁業者の生活がかかっているとか、海底資源が領海にあるとか。旧島民のふるさとを取り戻せというのも言われる。しかしいずれの主張も、いずれの思い入れがあるとしても戦争をするほど重要なことには思えない。

 漁業権について言えば、漁業者から漁業権を買い取るような事例はいくらでも国内では行われている。その島を取り戻す対価と比べれば、余りに小さなものである。海底資源と言う観点で言えば、日本の領海は充分に広い、そこで十二分に有効利用すればいいだけのことだ。そんな当てのないことを欲張ったところで仕方がない。

 ふるさと論は感情に訴えるところだが、北方領土の旧島民のかたで、二度と行きたくないし、思い出したくもないと直接言われた方が知り合いに居る。ふるさとは遠きにありて思う物。こだわる必要はない。ふるさとの島が無人島になった日本人は数限りなくいるだろう。

 日本周辺には数限りないと言えるほど利用していない無人島がある。江戸時代よりも無人島は増えているのだ。昭和以降に無人島になった島も相当数ある。そもそも日本人は中山間地から都会に移動している。国境の無人島がどうしても必要と言えるほど有効利用可能なわけではない。唯一考えられる利用方法が軍事基地である。国境だからである。

 軍事基地だとすれば、日本は要らない。しかし、相手国の軍事基地がそこに出来ることが困ることになるわけだ。南沙諸島が良い例である。中国が実効支配し、なし崩し的に軍事基地を建設してしてしまった。これに対して周辺諸国は不満ではあるが、力ずくに黙らされてしまった。これが実効支配と言うことだろう。中国は好きな国だったが、こういうことでだんだん嫌いになってくる。残念だ。

 尖閣諸島に中国の軍事基地が出来ることが一番困るはずだ。それさえ阻止できるのであれば、尖閣諸島がどこの国に所属しようが、かまわないような物だ。竹島は韓国の軍隊が駐留してはいる。しかし、別段日本の脅威になっているほどの軍隊というわけではない。

 竹島に日本を攻撃可能な軍事施設があるわけでもない。実効支配をして日本に奪い取られないようにしているだけの話だ。韓国から見れば、いつ日本が奪いに来るかと不安なのだろう。くだらないことだ。日本と韓国とは余り仲は良くないが、軍事的に戦いを始めるような状況でも無い。だから竹島の軍事施設も島を守る程度のものである。韓国にとっては大きな負担に違いない。

 北方領土で言えば、ロシアとの交渉は絶望的になった。アベ外交の失敗事例である。2島返還さえ不可能になった。アベ氏の見せかけ外交は無意味な物だった。こんな状況に陥ったアベ政権を持ち上げ続けた、北方領土返還を政治目的としていた鈴木宗男氏は、展望の悪さをどう考えているのだろうか。。

 領土問題は世界中に存在する。それが発端で軍事衝突も起きている。解決は極めて難しい物だ。国内政治への影響が強いからである。プーチンが2島すら返せなくなったのは絶対的であった人気に陰りが見え始めたことにある。ロシアの極東開発がめざましいほどの成果が上がらない。日本の経済協力もさしたる効果がない。アベ氏のような建前の口だけではダメなのだ。

 結局の所、日本の領土問題は政府の政治利用である。このことは昨日書いたので、改めて書かないが、日本の軍事力強化を進めるためには国民の支持が必要である。そのためには近隣諸国が不当に領土を奪いに来るという姿を見せることが必要になっている。

 日本は3つの領土を国際司法裁判所に提訴する以外に解決の道はない。相手国がそれを受け入れないとしても、あくまで日本は国境確定のために、紛争のある国境の領土はすべて国際裁判所に提訴して行く。韓国が実効支配を居ている竹島が一番裁判の可能性が低い。

 それでも日本から国際司法裁判所に提訴して行くべきだ。韓国がそれを受け入れないという形だけでも作っておいた方が良い。そのためにも3国に対して同時に、ロシアや中国に対しても領土問題の提訴を行う必要がある。平和的解決の日本の外交姿勢を世界に示す必要がある。

 国際裁判所が機能していないとか、公正とは言えないとか、色々見方によって問題があるとは思われるが、平和憲法を持つ日本国にとって、世界の信義と公正を重んじ、国際司法裁判所に結論を委ねることが唯一の選択肢である。それが日本のこれからのアジア外交の在り方を示して行くことにも成る。

 ところがこれを決行できない理由がある。選挙である。領土問題を裁判に
託して解決すると言うことが、世論の反発を招くカモしれないという不安である。自民党の考え方である。自民党の中核を形成する保守派の思想は韓国、ロシア、中国とよく似た国家主義者なのだ。これはいつかは乗り越えなければならない、競争思想である。

 だから平和憲法を改憲して戦争を出来る普通の国になろうというのだ。それが国家の尊厳のように主張するが、それでは日本は戦前の軍事国家に戻ってしまう。敗戦で学んだことを生かすことが、民主主義国家の選択である。国民が領土などこだわる必要がないと考えるようになることが、まず必要である。

 どれほど領土問題が日本の負担になっているのかを考えるべきだ。石垣島にも海上保安庁の艦船が10隻ほど居る。交代で尖閣諸島を見回っているのだろう。全く無駄な費用がかさんでいる。石垣島にミサイル基地を建設している。これは無駄どころか、石垣市民を危機に陥れる基地だ。

 一番良い解決は2つの国家の共有地という裁定ではないだろうか。両国で軍事基地化はしないと取り決める。漁業権についての取り決めも行う。両国の平和の象徴としての島作りをして行く。両国の安全の為の灯台や避難港を作る。竹島には韓国の観光施設もあるらしいが、タックスフリーの販売所も良いかもしれない。

 日本から領土問題の発想の転換を図る以外に領土問題の解決はない。
 

 - Peace Cafe