耕作放棄されたミカン畑の復田について
耕作放棄地の復田を10カ所やったことがある。どこも、それぞれの条件があり、一様ではなかった。貴重な経験をさせて貰ったと思っている。何とかこのやり方を人にも伝えたいと思うのだが、これだけは一緒にやりながら、考え方を伝えるしかないと思う。
今回、欠ノ上田んぼの下流域の2反の田んぼの復田をすることになった。是非一緒にやりたいと予定していたのだが、コロナで小田原にはまだ行けないことになり、キャンセルにしてしまった。残念だが仕方がない。
それは私自身が新しいことを学ぶ機会を失ったと言うことになる。今度やるとすれば、西表島のヤマネコの餌場の田んぼと言うことになる。生かせ経験がきっとあると思っている。計画は2カ所ある。いつ始まることになるのかは決まっていない。
今加えて貰っている欠ノ上の一町歩あまりの田んぼも、耕作放棄地で荒れ果てた場所になっていた江戸時代初期に作られた田んぼである。山に水路のトンネルを一キロ近く通して、水を確保して田んぼに水を引いた。それほど貴重な場所である。それが田んぼを辞めてミカンの畑になり、そして耕作放棄されて荒れてしまっていた。
欠ノ上田んぼは政府の政策としての元気回復事業で行われた。地元の建設業の人が、農業分野の技術を習得するという意味の事業であった。経験のない人が復田をやるのだから、田んぼになった後使う私が、細かく計画して、2ヶ月ほどかけて田んぼに戻したものだ。
田んぼに戻して、今も耕作が続いている。耕作をしてみればああすればよかった。こうすれば良かったということが出てきている。失敗の経験を重ねて、次に経験が生かせるようになる。特に昔ながらの自然になじむ方法を考えることが重要である。
こうした経験を整理して次に生かせれば良いと思うのだが、田んぼは全くそれぞれで、その田んぼの条件に合わせて対応するほかない。だから整理して記録すると言うことは難しいことだと痛感する。やってみなければ分からない部分が余りに多い。やりながら工夫を重ねるほかない。
田んぼは土壌が異なる。水の入水排水も違う。水路の形状や水量でも田んぼの作りは違ってくる。いくらでも水があるのなら楽なことになるが、そんな田んぼの方が珍しいだろう。平場の田んぼと棚田では又異なる。段差が土手であるか。石積であるか。1メートル以上の段差があると、後々苦労する。
硬盤があるかないかでも大きく異なる。一反以上の田んぼの場合は機械がどう入るかも計画しなければならない。日照条件も影響してくる。そういうことを整理して、こうすればどこの田んぼにも通用するという方法が分かれば良いのだが、田んぼについてはそれは無理なことだと思う。
だから一般には大型機械を入れて、コンクリート化してしまう。流れは三面コンクリート張りになる。あるいは地下の塩ビ管にして、蛇口をひねれば、水が出るような方式である。これでは生き物の多様性が維持され、貯水機能のある環境に良い田んぼにはならない。人工的な田んぼは作りたくない。
今度欠ノ上田んぼを新しく整備することになった。お隣の地主さんがミカンを切ってそのままにしていた田んぼである。農地に入る道がないので、私たちの畑から、道路を作る以外には耕作できない条件の農地である。道路の入り方も、研究が必要である。
復田の手順を考えてみた。一年目でしかも40年も畑だった場所と思われる。水の湧く場所がありそうだ。地中にどの程度石があるのか、やってみないと分からない部分が多い。
以下私の考える手順です。下に降りる道路造りが後々まで影響すると思うので重要。道路の下に水路が来る。しかもBへの水の取り入れ口も近い。抜根の為にユンボを下の田んぼに下ろすとすると、降りるための道路造りが先になるのか。
1,草刈りをして全体の様子を確認する。(完了)
2,上の畑から、下の田んぼに降りる道を作る。ユンボを農協から借りる。
3,降りる道の下に水路があるので、水路トンネルを考える必要がある。
4,ミカンの木の抜根をする。ミカンの枝や根を片付ける。
5,上からの水路は3系統あるが、どの水も田んぼに入れられるようにしたい。水不足のおそれがある。
6,水路の取り回しを塩ビ管で出来るか。塩ビのU字型溝でやるのか。
Bへの水の取り入れは川側の水路を塩ビ管で空中を渡すのが一番か。また、15番の排水を塩ビ管でやはり空中を渡して入れる。中央の水路からAへの水の取り入れ方法はやはり塩ビ管を空中で渡す。道路側の水路からの水はCに入れられるのか。塩ビ管については農政課と話し合い、現物支給して貰う。
早めに農政課に打診して貰う。同時に、里地里山協議会の田んぼとして、申請したい旨のお願い。正確な田んぼの地番が必要とのこと。
7,石積の積み直しを行う。ユンボで石を配置しておく。
8,ユンボでの仕事はまとめて行いたい。前半(抜根と道路)、後半(石積みと畦作り)で2回に分けて借りるのが妥当か。
9,畦作りを行う。これもユンボで行うが、土をたんぼ内で調達できるように計画を立てる。
10,一応出来たところで、肥料撒き、荒起こし、水入れ、代掻き。
11,硬盤のない田んぼなので、浅い荒起こし、浅い代掻きで一年目を行い、慎重に調整をする。一年目は収量よりも、田んぼの安定化を図る。
以上の工事で、一気に行ったとしても、最短7日間になる。10日ぐらい見なければならないのではないか。以上が2反の放棄されたミカン畑を復田する、おおよその計画になる。始めて見ると予想外のことも出てくるだろうと思われる。