中国は日本に大きく影響する

   

竹富島が低く見えている。

 中国はTPP加盟を希望した。アメリカよりもさきに参加を表明した形だ。抜けたアメリカトランプよりも、よほど賢い選択である。アメリカに対抗するためにはTPPに加盟するメリットは大きいはずである。日本はこの状況をどう判断することが出来るのだろうか。

 たぶん、大統領がバイデンになればアメリカも入るのだろう。そのときでも中国は加盟するのだろうか。そうなれば少し状況も変わってくる。

 アベ長期政権下の日本の外交的情勢は何も成果を得られず、悪い方向にだけ進んだ。対韓関係は史上最悪である。対北朝鮮政策では政権が最優先とした拉致問題は進展なし。北方領土交渉は明確に後退した。対中関係では習近平国家主席の訪日の失敗で中途半端になったまま次の手が打てない。

 アベ政権の掲げた積極的平和主義ほど怪しげなものはなかった。アベ政権のように、標語だけの張りぼて政権では外交は後退するだけだった。しかし、この間の世界の緊迫度は一段と高まったわけで、日本の無策がむなしいばかりである。日本には中国さえ敵に回しておけば、それでよしという人が未だにいるのだが。

 安倍政権下の積極的平和主義とは自衛隊の海外派兵では無く、実質は琉球弧への敵基地攻撃のミサイル基地の建設であった。これはアメリカトランプを忖度したものだ。加えてアジア諸国に対する武器提供等による、対中国包囲網の形成であったと言える。

 アベ外交は世界中を歩き回ったばかりで、アフリカや中東からは手を引いたと言える。自分の周辺の不安に専念せざる得なかったと言うことが現実かもしれない。対中国に対する防衛政策が中心であった。アメリカトランプとの関係も、対中国関係悪化の結果と言うことであろう。

 アベ政権は国際貢献とか、積極的平和主義とか、旗印を掲げはしたが、実はトランプと同じ日本一国主義だったと考えたほうがいいように見える。アメリカとの関係も何も整理が付かなかった。日本のポピュラリズムだったのかもしれない。世界の中の日本がいつも井の中の蛙で終わる大東亜共栄圏と同じで、東亜の夢となり敗戦になるわけだ。

 日本に取って中国は重要な隣国である。日本外交の最も重要な要素になる。地政学的にみれば当たり前すぎることで、反中国主義者でも異論が無いだろう。しかし現状では中国は単純に最大の脅威でもあるとされている。同盟国アメリカへの配慮であろう。この状態を解消できるかどうかが、日本の命運と言えるぐらいに大きなことだろう。

 中国は一方で最大の経済的機会でもあると見られている。巨大な市場であり、文化的親和性があり、14億人の人口である。石原慎太郎氏のように中国をシナと呼んで嫌う人でも、日本の経済的な発展に関係が不可欠なこととは考えざる得ないだろう。後6,7年でアメリカ経済を追い抜く可能性が出てきている。投資家であれば見逃せない状況だろう。

 その中国がTPP加盟を模索している。今やアメリカを凌駕する中国。日本の未来にとって中国の経済発展は軽視できない大きさであるのは当然のことである。しかし、中国の未来は不安定である。覇権主義的な国であると同時に、民主主義が成立していない一党独裁の国である。この難しさをどうするかである。

 そして、中国は14億人という日本の10倍、面積25倍の国である。この巨大さが経済成長の要因であるわけだが、同時に過去の少子化対策で、日本以上に深刻な人口のゆがみを迎えるはずである。このときもすでに迫っても居る。それは日本にも影響してくるゆがみと考える必要がある。

 一番大きな不安は食糧危機である。この巨大国中国も食糧自給が出来ない国なのだ。中国が経済成長をして、輸入できる状態になったために、世界全体の食糧危機はより深刻化した。貧困な国はより食糧危機に陥ることになった。

 労働人口が減少し、老人国家になったときに一党独裁の国家が乗り切れるかどうかである。国民に不満が生じることになれば、収まりが付かなくなる可能性が高い。人間を力で押え込めば、必ずどこかで破綻が広がって行く。中国は日本との関係を改善したい気持ちもあるはずである。

 国家資本主義とも言える企業を国が統制を取る国である。しかし、資本は自分で動き始めるから、アリババのように国との調整が付かなくなる。どのように国家を越えて行く資本を統制できるかが、中国の次の課題なのだろう。

 戦後の日本は長きにわたってアメリカとの同盟に寄りかかりすぎてきた。アジアの一国としての進むべき方角を考えなければならないときがきている。日本はアメリカに対して、自由と民主主義の正義を守る国で存り続けるよう働きかけるべきだ。

 当然日本が正義の独立した国で無ければならない。アメリカがアジアと関係を後退させることは、世界平和のためにならないだけで無く、アメリカの国益を損なうことになる。菅政権にはアメリカがここまで成長できたことは、アメリカの世界に対する自由主義経済と議会制民主主義の正義を貫いてきたからだと言うことを思い出させて貰いたいものだ。 

 日本は中国に対して、TPPに加盟を求めるのであれば、覇権主義を止めて、大国に相応しい振る舞いに改めるよう働きかけるように要請するべきだ。法治国家であること。民主主義を尊重すること。人権を守ること。世界のどのような小国も、共に発展する道を歩むこと。これらの価値観が大国としての中国の国益であることを理解して貰うように、日本は行動しなければならない。

 習近平の腐敗一掃は、いつ自分に火の粉が降りかかってくる分からない独裁でもある。新自由主義経済を目指す、日本やアメリカにしてみれば、自由や人権が無い場では能力主義が育た無いと考えている。だから、中国の経済成長はあり得ないと考えてきた。

 ところが現実には中国は国家資本主義と言う今までに無い形の経済政策をとり、世界に例を見ない急成長を遂げている。国家資本主義にどのような限界が存り、どこで頭打ちになるのかは今のところ意見の分かれるところである。中国の経済はアメリカを凌駕するところまでは行くとみている。

 しかし、そのまま上手くゆくとも言えない。中国は「老人人口の偏り」「食糧問題」「資本の国家越え」「自由への希求」から、変調を来すのではないだろうか。中国人は充分に自国の問題点を理解している。それが今起きている企業への圧力である。

 習近平政権もやはり修正主義政権である。経済成長のためには共産党の理念、毛沢東主義も簡単に捨てている競争の原理を取り入れながら、国家主義的な合理性を巧みに国民に押しつけている。ある意味競争にさえ勝てば良いという、経済至上主義なのだろう。

 このやり方は国家運営者が有能であり、自分の利益に固執し裸の王様にならない限り、当面成功を続けるとみていいのでは無いか。その意味で、習近平政権は今のところ、順調な様子である。その中国にも大きな問題がまっていることは自覚しているはずだ。

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