第37期竜王戦藤井竜王の防衛

   



 今年の竜王戦では藤井竜王に挑戦したのは、佐々木勇気8段であった。第4戦まで先手番が勝つという展開だった。第6局も作戦的には佐々木8段の構想が上回り、また先手番が勝利し、3勝3敗になり、振り駒勝負になるのかと一時は思われた。しかし、藤井竜王の勝負術が勝り、竜王の防衛になった。

 挑戦者佐々木8段の研究は素晴らしかった。初のタイトル戦にかけた強い決意が感じられた。対藤井戦の序盤からの戦略をAIをもちいて、とことん研究していたのだと思う。それは次々に現われる挑戦者がそれぞれに戦略を練って登場するのだから、藤井7冠にしても簡単に勝てる勝負ではなくなっている。

 しばらくは藤井竜王の一人天下かと思われたが、みんながAIを利用して藤井将棋を研究している。一気にその実力差は縮まった。後は記憶力の問題になる。記憶力は若いほど有利とされるが、個人差もあるわけで、佐々木8段のようなすごい人が登場する。

 佐々木8段は、最強の棋士藤井7冠に正面から戦いを挑み、がっぷり組み上がり、さあどうなるのかという、場面を作った。特に藤井7冠が長考に入った第6局の67手目、5六成り角引きの場面だ。天才が脳髄を絞りきるような勝負を行うのは、よほどの挑戦者の研究が必要なのだ。

 今回の竜王戦のレベルの高さはまさに頂点の戦いであった。佐々木8段の研究のすごさと、それを凌ぎきった藤井7冠の見事さも良かった。佐々木8段は何かをこの挑戦にかけていたように見えた。それ故に敗れてすがすがしかった。

 どの対局でも、いつも思うのだが、感想戦の素晴らしさだ。これはもっと演出した方が良い。ほかの戦いにはない、特別な仕組みだ。人柄が表れる。これをもっと見せて貰いたい。盤をけって帰ってしまった棋士もいないわけではない。そういう人間はすぐ限界が来るから不思議だ。

 コンピュター革命期に、人間の脳髄の戦いのすさまじさを見せて貰えた。将棋界は、ものすごいものだと改めて感じた。藤井聡太という天才が現われ、その天才を正面から打ち負かそうという人間が登場している。人間は素晴らしいものだと、感服させられた。

 文化というものは勝者だけに意味があるのではない。敗者の美学を大切にするような奥深さがなければ文化とは言えない。その点将棋はなかなか素晴らしい精神を、今に伝えている。感想戦で平常心で至らなさを口にしていた。今回の竜王戦の挑戦者佐々木8段は全力で負ける見事な姿を見せてくれた。

 今の藤井7冠に正面から戦いを挑み、がっぷり組み上がり、さあどうなるのかという、場面を作ることができた事がすごいのだ。これには藤井7冠も特別な思いが湧いたと思う。今まで外の棋士との戦いでは、このがっぷりと組み合うことがなかった。


 敗れた叡王戦の伊藤匠叡王も正面から勝負に勝ったという気がしなかったのだ。何か変調の藤井7冠が自ら敗れたような気がした。変調の理由は、藤井7冠がさらに自分の将棋を進化させようとしているように感じた。常に進化しなければ、勝てないのが将棋なのだろう。

 長考に入った第6局の67手目、5六成り角引きの場面だ。天才が脳髄を絞りきるような勝負を行うのは、よほどの挑戦者の研究が必要なのだ。先手番の佐々木8段の研究手段が、序盤有利な展開を作っていた。そして未知の局面の見せ場を作る。

 今回の竜王戦のレベルの高さはまさに頂点の戦いであった。佐々木8段の研究のすごさと、それを凌ぎきった藤井7冠も良かった。佐々木8段は何かをこの挑戦にかけていたように見えた。しかし、敗れてすがすがしかった。繰返し思うのだが、感想戦の素晴らしさだ。これはもっと演出した方が良い。

 コンピュター時代に、人間の脳髄の戦いのすさまじさを見せて貰えた。将棋界は、ものすごいものだと改めて感じた。藤井聡太という天才が現われ、その天才を正面から打ち負かそうという人間が登場している。人間は素晴らしいものだと、感服させられた。


 今度は永瀬9段との王将戦である。永瀬9段は研究の鬼軍曹である。今度こそと徹底した研究の基に挑戦してくるだろう。最終版の見落としが今度はないはずだ。藤井7冠は対戦相手の将棋を研究する時間がどうしても不足せざる得ない。やっと竜王戦が終わり、1月の12日から王将戦である。

 永瀬9段はとことん藤井将棋を研究し尽くしているはずだ。それもAIを駆使している。AIの強さは毎年1段ぐらいは強くなっていると考えていい。今や20段くらいの強さだ。つまり、藤井7冠がAIと100回戦い勝てるのは1,2回なのではないだろうか。全敗しても不思議がない。

 そういうAIを仮想藤井7冠として、永瀬9段は徹底研究をしているのだ。つまり、中盤戦まではAIと戦うようなものになっている。だから、後手で勝つのは至難の業なのだ。先手番は作戦を誘導できる。自分の研究に持ち込めるのだ。後手番はその研究を外したところに、勝負を求めなければならない。

 この戦機を作り出す戦い方はさすがに藤井7冠は優れていると思うが、それでも相手が失着してくれない限り勝算はない。佐々木8段は研究を重ねてきた作戦で間違ったわけではない。特に先手番で敗れた第6局は作戦をはずれたところに誘導されて、そこでいくらかの失着が出た。

 

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