西表島世界自然遺産決定
西表島は世界遺産に決定した。西表島の自然環境から考えれば当然のことである。今回の世界遺産は奄美大島、徳之島、沖縄本島やんばる、西表島と大きく離れた南西諸島の4つの地域である。どういう自然環境に置いて関連があるのかには少し疑問がある。
いままで、白神産地。知床半島。屋久島。小笠原列島。の4カ所が指定されていて、5カ所目の指定になる。世界でも213件の指定しかされていない。人類全体にとって価値ある自然を守るための責任を明確にする責任の重い指定である。すばらしいことであるが、大変な責務を負ったとも言える。
特に関心が深い場所がイリオモテヤマネコの居る西表島である。この島は単独で申請する意味がある。過去の4つの指定と同等以上に価値のある自然遺産の島である。小さな島に生存を続けてきたヤマネコの存在がある。亜熱帯の自然がそのままに残されている。
このヤマネコの生存を守ることは21世紀の日本人の責務である。環境省はイリオモテヤマネコの生存数の完全把握をするためのプロジェクトを今年度実施することにしている。2008年の調査時点で生息数は100~109頭と考えられている。その後減少傾向という予測である。
すでに、前回調査から13年が経過している。まず現状を把握しない限り、今後の保護計画を立てることが出来ないであろう。前回調査の100~109頭がどれほど正しいものかも、特に島の内部の調査がされていないために不安がある。すべての個体に識別番号を付ける必要があるのだろう。
今度は島を100のメッシュに分けて、全地域に定点カメラを備え完全把握を試みるらしい。もし島の中央内陸部にイリオモテヤマネコが居るのであれば、島の内部の環境はここ50年すこしづつ人間の手が入らない状態になってきている。ヤマネコの生息には条件は良くなっている。
一方、海岸線のヤマネコの生息が濃いとされている地域は、前回調査以降交通事故が多発するなど、開発が進みヤマネコにとっては生息が厳しくなっていると思われている。観光客の増加も海岸線の交通量に反映している。エコツアーの増加もヤマネコにとっては生息域を狭めているだろう。
西表島の生物の生息状況から、ヤマネコが目一杯に生息するとしても150頭前後ではないかと計算されている。説によってはもう少し多く可能という見解もある。それでも200頭止まりと考えていいのだろう。また、100頭以下になってくると哺乳動物の集団数としては、下限とも言われている。その意味ではイリオモテヤマネコの生存はすでに奇跡的なものと言える。
西表島の面積は300㎢つまり2㎢に1頭の生息である。メッシュによる調査はは三平方キロと言うことになる。数頭が一地域に重複して存在しているようなので、予想では海岸地帯が多く居るとされている。すでにカメラで確認されている地域である。島の中央部にも居て欲しいと願うばかりである。
ヤマネコにとっての一番の危機は交通事故である。今後は1頭の交通事故も起さないための努力が必要であろう。そうしなければ、ニホンオオカミ、ニホンカワウソ、それに続く第3の絶滅種になりかねない。世界自然遺産に指定を受けたと言うことは、絶滅などあってはならないと言うことだ。
交通事故は防げる。人間がその気になれば出来ることである。なんとしてもルールを守って貰いたいことだ。一つにはスピードが出せる道をヤマネコの生息域を突っ切るように作ってしまったことにある。これは、長年にわたる、人間とヤマネコのどっちが大事なのかという、地元住民から出た怒りが背景にある。西表島では人間のためには便利な道路建設が必要であった。横断道路も計画されたが、こちらは中止となった。
観光のためと考えればいいのだろうか。ヤマネコにはほとんど配慮のない道路が作られてしまった。その結果ひどいときには月に1頭が交通事故に遭遇する結果になっている。最近コロナで観光客が減少している。一年半交通事故がなかった。これから考えると観光客のレンタカーが事故の原因になっている可能性が高い。私が観察したところでは住民の車のスピードもかなり早い。世界遺産の島なのだ。スピード違反の監視カメラを設置して、取り締まりを強化してはどうだろうか。
今度の全島調査の結果100頭以下と言うことになれば、新しい保護計画を考えなければだめだと言うことになる。場合によっては捕獲して人工的な繁殖計画も必要になってくる可能性がある。又地域を決めて人が立ち入ることの出来ない場所を作る必要もある。
全く素人考えではあるが、田んぼがイリオモテヤマネコの餌場になっていた可能性がある。現在電気柵で田んぼが囲われるようになって、ヤマネコが入れなく成っていないだろうか。イノシシは入れないが、ヤマネコは入れるような電気柵に改良を加える必要がある。
イリオモテヤマネコは水を泳ぎ、魚や水性生物を捕食している。田んぼが放棄された場所は出来れば湿地として再生する努力も必要であろう。現在は以前の田んぼがアダンの密林化している場所が目立つ。ヤマネコも入り込めないようになっている場所が多い。水場を適度に配置することもヤマネコの生存には重要になるのではないだろう。
世界遺産になったことで、探検ツアーのような業者がさらに増えて、西表のジャングル奥地に人が入り込むことが予測される。これは禁止すべきだろう。現在、西表で活動するエコツアーガイドは、ツアーの人数制限等検討しているようだ。しかし、ジャングルツアーの潜りの業者も多数存在するらしく、そうした、隠れツアーがジャングルを荒らし、管理が行き届かない面があるらしい。
現状では西表島への観光客の人数制限を設けることと、入島者から費用を徴収し、西表の環境保護の資金にすべきだろう。また、観光施設等の建設が進み、生息地そのものの消失も進んでいる。もうこれ以上の開発が出来ないような枠組みも必要なのであろう。
ただし、西表島が人のいない島になれば良いというわけではない。今暮らしている人達が、暮らして行ける条件を整えながら、ヤマネコの生息を助けて行くことだ。過去何百年にわたりヤマネコと人間の共存が可能だったのだから、人口の減少した今であれば、共存の道は必ずある。
奄美大島ややんばるでは地元行政が踊って喜んでいた。しかし、西表島の行政である竹富町は喜んでいる様子はなかった。緊張感が顔に表われていた。もう少し複雑な状況なのだろう。今だ、人間とヤマネコとどっちが大切なのかという争いが隠れているのかもしれない。
ヤマネコを守ることが、西表島の人の暮らしを守ることになるという仕組みを作らなければならない。屋久島では世界遺産に指定されていこう、人口減少が進んでいる。そういうことにならないように、住民の暮らしを守ることが大前提である。