石垣島の地下水がユニマットによって枯れる。

   


 石垣島ではユニマットの巨大なゴルフリゾートが着工されようとしている。それは石垣市長の強力な後押しによって進められている。前勢岳の北斜面全体をゴルフリゾートの建設を許可すると言う暴挙である。石垣島の自然をそこまで壊して観光の未来はない。

 ゴルフリゾートでは大量の水を必要としている。日量1000トンの水を使うそうだ。そもそも水の貴重な島嶼部でそれほど水を使う事業が許されるはずが無い。そんな無尽蔵な水は石垣島のどこにも無い。市長によると、そのうち100トンだけしか島の水道水は使わないから大丈夫だと言うことである。

 ではあとの900トンの水はどこから手に入れる計画なのだろう。なんと地下水を汲み上げるというのだ。これは不可能なことだ。そのことで起こる地下水位の変化を予測できているのだろうか。海に近い場所でこれだけの水を汲み上げれば、必ず海水が地下水に入り始めるだろう。

 地下水が塩水が混じり始めれば、その地下水が関与する一帯の土壌環境が大きく変わって行く。植生も関わるだろうし、多くの生き物が命を奪われることになる。昆虫への影響は極めて大きいだろう。その地域の田んぼなどは営農出来ないことになるに違いない。そもそも地下水は将来使えないことになる。その時に成っても水道水は100トンだけというわけに行くのだろうか。

 具体的に考えてみる。前勢岳前方の平地に存在するのは、ラムサール条約指定の名蔵アンパルの湿地である。その一帯から、その周辺の水田地帯の水全体の塩分濃度が上がってくるはずである。これは疑う余地のないことだ。この問題を一切環境調査に取り上げていない環境調査ではまったく無意味と言うほか無い。環境調査では地下水の現況調査がなされていない。

 分かっていながら環境影響調査から意識的に外してあると考えられる。それほど水を使用するリゾート開発は石垣島では不可能なことなのだ。何故これほど水を使うかと言えば、それはゴルフ場ではない。ゴルフ場と言いながら、実はプール付きの高級別荘地と、プールのある巨大なホテル二棟の建設が主目的である。

 こうした驚くべき開発を何故市長が推進し、また市民もなんとなく受け入れているのだろうか。今起こっている事実が伝わっていないと言うこともいくらかはあるだろうが、たぶんそんなことよりも石垣島の未来像がむしろゴルフリゾートや巨大なホテルの建ち並ぶ、観光の島と言う選択をしているからだと思える。

 それがおかしいとは思わない。そういう沖縄本島のリゾート地の開発を見ると、石垣島でもそういう巨大なリゾート開発が可能なように感じられるのだろう。しかし、石垣島には石垣島の開発可能な範囲がある。その限界を超えてしまえば、もう自然を元に戻すことは出来なくなる。

 観光開発が悪いと言うことでは無い。観光が石垣島の生活を支えて行く産業である。だからこそ、その観光が永続できることを考えなければならないのだろう。石垣島観光は美しく多様な自然環境だ。このことを疑う人はいないだろう。市長だって同じだろう。

 地下水利用の許容範囲をまず正確に計ることでは無いだろうか。島の地下水の調査やダムの貯水量をしらべて、島の各地域ごとに、将来どのくらいの必要量があり、どのくらいの水の供給能力があるかを調べなくては成らない。その上で、石垣島の未来図を作る必要がある。この地域で無ければ、可能な場所もあるのかもしれない。

 現在でも水田への供給水量はいつも不足している。節水が毎年々呼びかけられている。今も防草のための通水は禁止という張り紙が出ている。水がなくなってくれば当然水田への供給が止められ、水田を止めて水の少なくても出来る農業への転換が言われるようになることだろう。畜産や果樹、サトウキビが推奨されることになる。

 水田を無くすと言うことがどれほどの環境破壊になるかと言うこともたぶん少しも考慮されないことが想像される。田んぼのための水資源が他の産業への水利用が進み、弱い産業である稲作農業が失われた事例は多い。私自身はこのことを一番恐れている。

 実は石垣島ではゴルフリゾートだけでは無い。ミサイル基地の建設。白保でのスーパーシティー構想。ポンツーンのカピラ湾沖への建設。カピラでの巨大ホテルの建設。次々に自然を破壊うる開発が計画されている。しかもそれは市長と保守会派の民主主義的では無い進め
方で民意を確かめること無く行われている。

 この間自治基本条例の住民投票条項の削除という事まで行われている。少数派の民意を押し込めてしまうと言うやり方である。少々島の自然を破壊するとしても、目の前の経済的な利益の方が優先であると言う考え方のようだ。この目の前の経済的利益だけを追うことは将来の損失になると言うことが見えていないのだ。

 石垣島の魅力は自然環境である。観光産業が盛んになってきたのも石垣島の海が美しいからである。これが美しいものでなくなることが、一番の石垣島の危機である。島の自然を美しく維持することが、観光産業の為なのだ。自然の維持能力の限界を超えた開発は、石垣島の未来を潰すことになる。

 沖縄県でもSDGSと言うことが言われている。持続可能な開発である。これは極めて総合的なことである。住民全体がその方向性をはなしあうことが、一番大切なことだと思う。島のみんながこの島の自然を大切な物だとして、守り育てる気持ちがそろう事が無ければ不可能なことだ。

 そのためには住民の意思を分断することが一番まずいことになる。開発を必要とする人と、自然を守るべきだという人が、対立構造になることはあっては成らない。まず充分に話し合える環境を作ることだ。話し合ってもわかり合えることは無いから、隠れて強行すると言うことが一番良くない。

 現在の石垣市長の態度はまさに秘密主義だ。どうせ反対する奴らはいるから、どう押し切るかだけを考えている。そして押し切ってしまうことが自分の支持者達には歓迎されると考えているのだろう。つまり開発支持者が多数派と言う意識である。

 しかし、それは市長は読み違えている。分断を深めても、リゾート開発を行うことを良しとする人が、半数以上いるとは思えない。来年の二月には市長選挙がある。ここまで民主主義を無視して、説明責任を果たしてこなかった市長が再選されるとは思えない。中山市長交代に向けて頑張らなければならない。

 

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