クイナを助ける。

   



 石垣島にはシロハラクイナというかわいい鳥がいる。アカショウビンの次に好きな鳥だ。クイナで有名なのは沖縄本島のやんばるにいる、ヤンバルクイナだろう。こちらは天然記念物の固有種である。本島に行ったときに観察することが出来た。やはり可愛らしい鳥である。

 何故クイナが島に固有種として生息しているかと言えば、飛べない鳥が多いからだ。飛べない鳥が生き残ることが出来たのは捕食動物が少ない島に限られている。現在、ヤンバルクイナが絶滅の危機にあるのは、持ち込まれたマングースと野良猫のためだ。

 同時にクイナは交通事故に遭いやすい鳥でもある。道路に出てきては餌を探している。そこをカラスなどに狙われるもので、素早く出てきてはあわてて逃げて行く。そのために自動車事故に極めて遭いやすいことになっている。石垣島では2ヶ月に一回ぐらいは引かれたクイナを見る。

 シロハラクイナは石垣島には沢山いるごく普通の鳥なのだが、とてもかわいい鳥なのだ。シロハラクイナはある程度は飛ぶことが出来る。そのためにだんだん生育地域を北に広げて、九州四国にもいるらしい。交通事故の一番多い鳥では無いだろうか。

 動作がちょこまかしていて、動きのかわいい鳥である。形も実に良い。余り飛ばないが、飛べないと言うことでも無く、赤色野鶏と同じくらい、200メートルほど飛んだところは見たことがある。しかし、他の島まで渡るほど飛べるとは思わなかった。だいたいは茂みの中で暮らしている。

 そのほかにはリュウキュウヒクイナという鳥も居る。名蔵に一カ所7羽ぐらいの群れがいつもいる場所を知っている。これは準絶滅危惧種と書かれている。シロハラクイナほど飛べないのかもしれない。形だけ見ているとシロハラクイナと、そっくりで動きも似ているのでつい間違える。

 保護をした写真の鳥は少し若い鳥ではないかと思う。だんだん背中の黒い色が濃くなり、胸の白さが目立つようになるのではないかとおもっていた。しかし、写真で確認するとリュウキュウヒクイナなのかもしれないと思うようになった。鳥は図鑑の写真とは随分違うものだ。季節や年齢、雄雌でかなり違うことがある。

 シロハラクイナは親鳥になるととても目立つ鳥だ。目立つからカラスやヘビやカンムリワシなどにもやられることがよくあるのかもしれない。しかし相当数いるところを見ると、こちらは繁殖力が強い鳥なのかもしれない。

 アジアの島々では固有種の飛べないクイナがいる島が多いという。そこに捕食動物が持ち込まれて、次々に絶滅をしているらしい。マングースや野良猫の問題もあるが、それ以上に気になるのはハシブトガラスである。畜産が始まると、カラスは急速に増える。石垣ではカラスにやられている場合が一番多い気がする。

 カラスは群れで行動する鳥なので、狙われたとなれば、たちまちやられてしまう。先日、カラスとカンムリワシが争っているところを見た。さすがに数羽だったカラスは撃退された。ほっとした。しかし、たぶんカエルだろうと思われるエサは落として食べることが出来なかった。

 シロハラクイナは慌て者で、ついつい道路などを突っ切ってしまう。いつも走っている鳥だ。その姿がとてもけなげで良いところなのだが、良く車にぶつかってしまう鳥なのだ。道路で死んでいる鳥で一番多い。庭などにもいる場所がある。そうしたところのクイナは、臆病ではあるが人慣れもある程度はしている。

 先日、絵を描いて戻る道で、道路の中央でもがいている鳥がいた。アカショウビンがカラスにいじめられていた場所のすぐそばである。これでは車にひかれてしまう。すぐ車を引き返して、見るとシロハラクイナ?である。たぶん自動車にぶつかったのだろう。すぐ抱えて茂みの中に置いてやった。

 ぶつかり方が軽かったのか、どこかを大きくケガをしている様子は無かった。脳震蕩を起したような状態と思われる。最初にすれ違った時点ではもがいていたのだが、車をUターンして戻ったときには、道路の中央でうずくまった状態だった。そっと抱えて、脇の茂みの中に隠してやった。

 血が出ているとか、骨が折れているという状態では無いことだけは分かったのだが、こちらも焦ってしまい、よく見ることもなくともかく茂みの陰に隠した。そのままだとカラスにやられる。置いてから写真を撮りその場を離れた。野鳥は時には人に触られたショックで弱ってしまうこともある。

 しばらくしてもう一度いって見るともういなかったから、助かったかもしれない。もうダメだろうと思い焦ってしまってよく観察も出来なかった。どうしたら良いのか分からなかったのでともかく隠した。助かったようで良かった。これで2度鳥を救ったことになる。これだけでも私が石垣島に来たかいがある。そのように鳥も思ってくれるかもしれない。

 バンナ公園の南の当たりが鳥の危険箇所である。以前、何度かカンムリワシもひかれた場所だ。谷間で下り坂の出口というような地形だ。水路や田んぼもあるから、餌場にも成っているのだろう。車の運転を注意喚起する看板などが一つだけあるが、さらに必要では無いだろうか。

 車がかなり飛ばす。アトリエカーは制限速度走行である。急ぐという事はない。朝、写生地までの時間が絵を描く気持ちを整える時間となっている。そうすると、どんどん追い越されて行く。島の車も、レンタカーもある。飛ばす気持ちは分かるが、少しだけ石垣島の大切な鳥たちのことを思い出して欲しい。

 アトリエカーにはカンムリワシliving togetherと書いてある。鳥を大切にすることは、自分たちの暮らしを大切にすることだと思う。名蔵アンパルは鳥類保護地域になるらしい。ここの海岸線を通過する道路は今50キロ制限である。

 ここ以外の石垣島の道路は、空港付近の一部を除けばほぼ40キロ制限である。町中では30キロ制限である。西表島も50キロ道路が多い。国立公園内だけでも、40キロ制限にすることは必要だろう。


 

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