自主避難は本人の問題か
復興大臣が記者会見で、自主避難者に対する国の責任を問われて、激怒してしまった。何故記者会見で怒鳴り出すような、馬鹿なことになってしまったのか。内容がどうであるかの前に、復興大臣という災害に対応する大臣として、もうそのことだけで失格である。これはアベ内閣嫌いだからではない。原子力災害という人によって受け止め方が多様になる。避難し転校した学校でいじめが起きているのだ。心理的要素の大きな問題に対して、大臣が怒鳴り出すなどあってはならないことだ。質問した記者の問いかけは、先日の前橋地裁判決で初めて自主避難者に対する国の責任を認めた判決が出たことを踏まえてであった。たぶん復興大臣はこの判決に対して不満だったのだろう。国は控訴している。自主避難は、あくまで避難する必要があるとは国は考えていない地域からの避難である。そこまで国が責任を持つ必要がないと考えているのだろう。しかし、放射能の影響に於いては国の安全基準も何度も変更されている。国によって基準も違う。人によって、国の基準を信頼できないとする人がいても当然のことだろう。
私は有機農業を行っている。農薬を使った野菜より、有機農産物の方を食べたいと思っている。その方が安全、安心だという心理がある。国もそのことを認めているから、有機農産物の国の認定を行っているのだろう。オリンピックでは有機農産物を提供することになっているという話だ。農薬を使う農業の農産物だからと言って、基準内であれば危険という訳ではない。それでも世界中が有機農産物を評価しているのだ。同じように、放射能がどの程度危険なのかは、確定されたものではない。人により、年齢により、その影響の度合いは異なる。また、その家族の考え方により、心理的に受け止めも大きく異なる。あしがら農の会の関係者でも、私が知る限り、小田原からでもよその地域に4家族が移住した人がいる。これも放射能分断だ。自主避難者を分断してはならない。こうした現実に対して、原発事故によるものだという認識が国にはないという事になる。小田原の茶業はとても苦しい影響を受けた。特に有機農産物を扱うものは、得も言われぬ圧力を今でも感じている。
去年になってお米を買ってくれている友人から、危険だからやめたいと言われて、仲違いした。6年経った小田原でさえ、こう言う訳の分からない圧迫がある。まるで小田原に暮らすことが愚かだというような、ことを暗に言われているのと同じことだ。まして福島に暮らすという事がどのようなことか、復興大臣には認識がないのかもしれない。今でも福島の農産物は価格が安いままなのだ。こういう現実に責任を感じないで、怒鳴り出すような復興大臣は許されるものではない。福島県からの自主避難者は自己責任だ。帰っている人も居るのだ。帰らないのは本人の判断だ。このように復興大臣が言い切った。政治とはそんなものだろうか。それでいいのだろうか。とんでもない話だと私は思う。放射能汚染では今でも疲労感から抜けきれない人が多数存在する。この現実に対して、復興大臣が無神経であってはならない。
今村雅弘復興大臣は佐賀県選出の議員だ。何故、東北の議員を大臣にしないのだ。神戸地震の時に関東の人は関西の現実を感じていないと、言われたことがある。その通りだと思った。寄り添いたい気持ちで、どんな状況だったか、どの位怖かったかと、お聞きして、怒られた経験がある。あの恐ろしい状況を思い出したくもない。という事が理解できていなかった。東北で被災した人が復興大臣であるべきだ。そうすれば、こんな無神経な対応ができるはずがない。アベ政権は驕っている。この独裁に入った政権は何をやっても許される気になっているのだ。森友事件でも、自衛隊報告書隠しでも、支持率が下がらない。間違いを正す機会を失っている。自分の思い通りすべてが行くと考え始めているのだろう。つまり、国民の多くが自主避難者は、本人の責任だと思っているというのが、アベ政権の認識なのだろう。日本人はかなり危険な状態に陥っているのかもしれない。